スタッフ
監督:トム・グリース
製作:マーヴィン・シュワルツ
脚本:トム・グリース、クレア・ハフェーカー
撮影:チェチリオ・パニアグア
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
ライデッカー / ジム・ブラウン
サリタ / ラクエル・ウェルチ
ヤキ・ジョー / バート・レイノルズ
ヴァーデュゴ / フェルナンド・ラマス
ヒューマラ / マイケル・フォレスト
ロメロ将軍 / エイキム・タミロフ
グリムス / ダン・オハーリー
フォン・クレンム / エリック・ブレーデン
パイレーツ軍曹 / アルド・サンブレル
日本公開: 1969年
製作国: アメリカ M・シュワルツ・プロ作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
黒人がスポット・ライトを浴びだしたころのアクション西部劇を選んでみた。しかも、相手は先住民やらメキシコ系という、少し意匠の凝った設定の作品。
メキシコ、ソノラサ国境に近く、アメリカ資本の鉄道も乗入れている場所。メキシコ政府に対する先住民ヤキ族の反乱が起き、軍が派遣された。司令官は、派遣されて来ているドイツ軍人の補佐と組み、鎮圧の名のもと虐殺を繰り返し始める。
そこに国境を越え、アメリカの警官ライデッカー(ジム・ブラウン)がやって来た。目的はアメリカで銀行強盗を起こし、6000ドルを奪ったジョー(バート・レイノルズ)の逮捕連行である。ところが、ジョーは銃殺されそうになっているヤキ族を助けるために騒動を起こし、ライデッカーの面前で逮捕されてしまう。
司令官に近付き、彼を引き渡せと告げるが治外法権の地。ならば、直接行使しかないと考えた。何とか隙を突き、脱走に成功する二人だが、途中、ヤキ族のサリタ(ラクエル・ウェルチ)と会って・・・
思わぬ方に走ってしまうアメリカ人を中心に描く娯楽西部劇。
越境して犯罪者確保に来た警官。相手は先住民とのハーフで、強盗した金は、先住民らの蜂起に使う100挺のライフルの資金であり、既に購入済み。
それを受け渡すのが先住民女性でヒロインである。とはいっても、本来は彼女の父親であったが、メキシコ軍に彼女の眼前で殺されていた。
その恨みもあり、女性は自分も果敢に参加すると言いだす。困ったのは警官である。ところが、メキシコ軍も銃購入の話を聞き、奪還を決め、更に警官も仲間と見なし、捕まえて殺せと命令。
嫌でも行動を共にしなければ、自身も身動きが取れないという状況に追い込まれていく。
ありがちな設定であるが、本作が興味深いのは、西部劇でありながら白人が、ほぼ登場しないこと。
顧問のドイツ軍人と鉄道会社の派遣社員のみ。
それまで散々虐げられてきた黒人や、先住民を主役らに設定し、悪役はメキシコ人。
派手な炎上シーンやアクションもあるが、どうにも有象無象の肉弾戦的大雑把さが際立つ。
その上、ロケ地がスペインで、正統派西部劇と違う空気感が流れ、イタリア製ウエスタンてな印象もある。
肉体派女優ラクエル・ウェルチの面目躍如的セクシー路線が満載だし、あくまでも娯楽作として突き進んでは行くが、やはり、西部劇の終焉を痛烈に感じさせてくる。
TV出身のトム・グリース監督の大作感をだそうと尽力した結果、空回りが目立つのが残念。
派手なシーンはそれなりに力が入っているのだが、その前後のシークエンスや、編集の繋ぎ方など、まるで時間軸がパラドックス状態だとも感じさせ、苦笑いを禁じ得ない。
脇を締めるヴェテラン俳優も存在せず、数少ない白人の扱い方など、どういう存在だったのかを尻切れトンボ的に流す。
要は3本立ての名画座か、午後のロードショー的に何も考えずに流し見るには適した作品。
そもそも白人抜きでの進行という設定には妙味があるので、もう少しひねった展開と編集のリズム感をだせば、面白くなったであろう凡庸作。