スタッフ
監督:ジョージ・スティーヴンス
製作:パンドロ・S・バーマン
脚本:P・G・ウォードハウス、E・パガーノ他
撮影:ジョセフ・オーガスト
音楽:ジョージ・ガーシュイン
キャスト
ハリディ / フレッド・アステア
アリス / ジョーン・フォンテイン
ジョージ / ジョージ・バーンズ
グレイシー / グレイシー・アレン
ケッグス / レジナルド・ガーディナー
レジー / レイ・ノーブル
カロライン夫人 / コンスタンス・カリアー
アルバート / ハリー・ワトソン
マーシュモートン卿 / モンタギュー・ラヴ
日本公開: 1938年
製作国: アメリカ RKO作品
配給: 日本RKOラジオ
あらすじとコメント
今回もアステアの戦前ミュージカル。7本製作されたジンジャー・ロジャースとの名コンビ解消後に初めて撮った、心機一転作。
イギリス、ロンドンブロードウェイの人気者でプレイボーイとしても名高いハリディ(フレッド・アステア)が訪英してきた。彼の行く先々では、常に女性ファンが参集して大騒ぎになる。
そのさなかに、貴族令嬢で意に添わぬ結婚を叔母に勧められているアリス(ジョーン・フォンテイン)が、御付きから逃げようとハリディの車に逃げ込んできた。突然の美人の乱入者に驚きながらも、すぐに好意を持つハリディ。
後に、彼女の素性を知った彼は、観光客を入れている彼女の居城に素知らぬ顔で入り込もうとするが・・・
新境地を見いだそうを意気込むアステアの芸が見られる作品。
7本のコンビ作があったが人気が翳り、相手役のジンジャー・ロジャースは演技派に転向しようとしていた。
結果、コンビは解消となりアステアが次に出演したミュージカルである。
そして相手役に起用したのがジョーン・フォンテイン。彼女は「風と共に去りぬ」(1939)に出演したオリヴィア・デ・ハヴィランドの実妹で、当時はまだ売れていなかった。
物語は米英のお国柄の違いと階級格差が絡むのだが、典型的「ボーイ・ミーツ・ガール」であり、すれ違いからハッピー・エンドへと進む正調ミュージカル。
確かにアステアはいつものアステアであり、見せ場もある。ただし、全体的な印象は、とても面白いのだが、何かが違うと感じざるを得なかった。
それはフォンテインが、美人だがミュージカル・センスには欠けるということに尽きると思う。
事実、彼女がアステアと踊るのは一曲のみ。しかもラストの盛り上げでなく、途中で登場してくる。
監督は後に「シェーン」(1953)、「ジャイアンツ」(1956)を撮るジョージ・スティーヴンス。
作劇力は感じるし、ヒロインが弱いと誰もが感じたのか、コメディ・リリーフとして執事頭と少年執事の金銭を賭けた確執や、後年「オー!ゴッド」(1977)でトボケた神様役を演じたジョージ・バーンズの見事なる芸達者振り等が魅力的。
それにも増して、ジョージ・ガーシュインが音楽を担当し、振付師の奇才肌ハーミス・パンの才能が爆発する、めまいがするほど面白い遊園地でのミュージカル場面が白眉である。
アステアの至芸を楽しむより、トータリティで充分に楽しめる稀有な作品。