桜もほぼ散ってからの新年度。夏日に迫る気温の日々が続き、今夏は暑いのだろうと思っていた。そこに来て、訃報が入ってきた。
田中邦衛である。TVドラマの「北の国から」が有名だろうし、映画では『青大将』役だ。特に青大将役はバブル時代なら、間違いなく主役だとも感じる。
ただ、「北の国から」は途中でリタイアしたので、個人的にTVドラマで印象いのは「若者たち」(1966)での長男役。これは映画にもなり、半世紀近く前に新宿の映画館で3部作のオールナイト上映を何度も観た。
円熟味を増したのは中年以降でそれまでは個性的な脇役の印象。何とも独特な発音で、昔から多くの人に物まねされた俳優でもある。
有名な逸話では、高倉健が共演した折、刑務所から帰ってきた役の高倉に黙って白飯をよそって差し出す場面で、あまりに上手さに自然に涙が出たと聞いたことがある。
実に様々な役を演じてきたが、やはり御贔屓監督の岡本喜八作品での、男性として不能というコンプレックスから残虐なギャングという、何とも珍妙な役などが思い浮かぶ。
岡本監督での起用法は、いつも斬新というか、田中への「当て書」てな印象が強い。
元々、俳優座出身の演技派で、「網走番外地」や「仁義なき戦い」などシリーズものにも数多く出ているし、TVの刑事ドラマなどでは主役をサポートする「押さえキャラ」が多かった気もする。
随分と俳優業から遠ざかっていた印象もあり、調べたら最後から11年も経過していたので、当時で77歳であったのか。その点では、引き際も良いなと思った。
88歳か。喜寿で引退し、米寿で天昇。人生100年時代とは、昭和何年以降に生まれた人間のことを指すんだろうな。
また、好きな役者が減ったな。というよりも、何人残ってるんだ。