スタッフ
監督:ニコラス・メイヤー
製作:ハーブ・ジャフェ
脚本:N・メイヤー、スティーヴ・ヘイズ
撮影:ポール・ローマン
音楽:ミクロス・ローザ
キャスト
ウェルズ / マルコム・マクダウェル
スティーヴンソン / デヴィッド・ワーナー
エイミー / メアリー・スティーンバージェン
ミッチェル警部補 / チャールズ・シオフィ
キャロル / ジェラルディン・バロン
ターナー夫人 / アンドニア・カトサロス
シャーリー / パティ・ダーバンヴィル
エドワーズ / ジェームス・ギャレット
ミッキー / バイロン・ウエブスタ
日本公開: 1981年
製作国: アメリカ H・ジャフェ・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
発想勝利とも呼べる変わった意匠のSF作品で繋げる。何と有名作家H・G・ウェルズが主人公という異色のSFスリラー。
イギリス、ロンドン1893年のこと。とある晩、街の路地で売春婦が惨殺される事件が起きた。昨今、巷を賑わせている商売女のみを狙う『切り裂きジャック』の仕業だ。
その頃、作家のウェルズ(マルカム・マクダウェル)邸で、仲間たちが集っていた。そこへ外科医のスティーヴンソン(ジャック・ワーナー)が、遅れてやって来る。
やっと全員が揃ったとウェルズは、すぐさま地下室に彼らを案内した。そこにあったのは一人乗り奇妙な機械。ウェルズは、誇らしげに語りだす。「これが時空を行き来できるタイム・マシンだ」。動力は太陽エネルギーで、一分毎に二年間を移動できると。
しかし、まだ、それに乗る勇気はないと苦笑いを浮かべた。その直後、警察が邸にやって来た。すぐ近くで殺人事件があり、現在近隣を調査中で協力願いたいと。ここにいるのは紳士のみだが、協力は惜しまぬと返答するウェルズ。
すると、警察はスティーヴンソンのバッグから血の付いたナイフと手袋を発見する。驚く一同だが、既に彼の姿はなかった。緊急配備を敷いくため警察は、友人らを護衛するからと邸を辞した。しかし、不思議に感じたウェルズが地下室に行くと、タイム・マシンの姿がないではないか。
まさかと驚いていると、電光閃き、マシンだけが戻ってきた。設定を覗くと『行先:1979年11月5日』と表示されていた・・・
ある意味、奇想天外な設定で繰り広げられるSFアクションの佳作。
もし、現代社会に19世紀の科学者兼作家と殺人鬼が送り込まれて来たらという突拍子もない設定。
しかも舞台となるのはロンドンではなく、アメリカのサン・フランシスコだ。何故かというと、そこの博物館で『H・G・ウェルズ展』が催されており、展示品としてタイム・マシン自体があったから。
いきなりニヤリとさせられる。恐る恐る主人公が現代にジャンプしてくると、当然、飛行機やらプラスティックや電化製品など、まったく知らないことばかりの時代に放り込まれる展開。
しかも身分証も持っていないので、どこへ行っても不審者扱い。だが、目的は、友人である「切り裂きジャック」の捜索だ。
そこに優男の主人公に一目惚れするアメリカ人女性が絡んできて、物語は二転三転していく。
時代のギャップというコメディ要素を散りばめ、現代の方が自分に合っていると感じる殺人鬼が何をするのかというスリラー。派手ではないが、ツボを突くアクション場面など、面白く見ていける。
そもそも、ウェルズ原作の「タイムマシン」をアレンジし、原作者自身に置換してストーリィを進行させるという手法も目の付け所が悪くない。
タイム・マシンのデザインだって、どこか「海底二万哩」(1954)の潜水艦ノーティラス号を想起させるし、さもありなんと思わせるコメディ場面やら、科学者でもある主人公が現代テクノロジーをすぐに吸収し実践ようとする進取的精神も頷ける。
確かに、遥か未来まで描こうとすると無理もあるが、現代社会でのロケならば、予算も膨大ではない。
更に、マルカム・マクダウェルやデヴィッド・ワーナーといった派手さはないが、クセモノ俳優を起用しての展開となると、成程と、随所で笑みがこぼれる場面もあり、映画ファンとしては嬉しい。
突っ込みどころもあるが、そもそもウェルズが本物のタイムマシンを製作していたという時点で、設定はコメディであろう。
それでも真面目な進行を心掛け、飽きずに展開させていく脚本家上がりのニコラス・メイヤー演出も大したもの。
若干の血しぶき場面などもあるが、トータルとして、着想勝利の典型として、かなり楽しめる作品である。