スタッフ
監督:ヤノット・シュワルツ
製作:スティーヴン・ドイッチ
脚本:リチャード・マシスン
撮影:イシドア・マンコフスキー
音楽:ジョン・バリー
キャスト
コリアー / クリストファー・リーヴ
エリーズ / ジェーン・シーモア
ロビンソン / クリストファー・プラマー
ローラ / テレサ・ライト
アーサー / ビル・アーウィン
フィニー教授 / ジョージ・ヴォスコヴェック
老貴婦人 / スーザン・フレンチ
マリー / モード・ストランド
コリアーの父 / ジョン・アービン
日本公開: 1981年
製作国: アメリカ ラスター作品
配給: CIC
あらすじとコメント
今回は「タイムマシン」ではなく「タイム・スリップ」もの。事前予想を見事に裏切る、苦しいほど愛おしく切ないラブ・ロマンスの秀作。
アメリカ、コネティカット1972年のこと。大学生のコリアー(クリストファー・リーヴ)が書いた戯曲が学内で上演され、絶賛を博した。有頂天の彼だが、会場に貴婦人の雰囲気を醸す老婆がおり、首を傾げた。すると彼女は、古風な金時計を彼に渡して、呟いた。「私のもとへ帰ってきて」。キツネにつままれた態になるコリアー。
そして8年の時が流れ、著名劇作家となった彼だが、スランプに陥っていた。気分転換にと宛てのない旅に出向いた先でクラシック・ホテルを認めた。風格がありながら暖かさが漂う古風で瀟洒なホテルで、そこに逗留を決めるコリアー。
老ボーイの案内で館内を廻ると歴史展示室の中に、ひと際輝く肖像写真を見つける。それは20世紀初頭の大人気女優エリーズ(ジェーン・シーモア)だと聞かされる。
今までにない胸騒ぎが起き、彼女のことを探求したくなり・・・
思いの激しさが時流をゆがめて大ロマンスへと昇華する切ない系メロドラマの良作。
スランプ中の劇作家が、偶然訪れた先で一枚の写真に『一目惚れ』する。
やがて、逗留しつつ更に調べだし、益々、『強烈なる片思い』に陥り、何とか会えないかと激しく思い込み始める。
単純で完全なるストーカーの誕生ではある。しかし、恐怖を煽る「ホラー」ではなく「SFファンタジー」へと昇華していくのだから驚いた。
映画は冒頭、老婦人が登場してきて謎めいた言葉を主人公に呟く。
タイムリープの伏線であると多くの観客は気付くだろう。ただし、年齢差は何故に、とも。
主人公の設定は思い込みの激しいストーカー気質である。しかし、20世紀初頭の舞台女優だって激情型。当然、辣腕マネージャーは主人公の存在が疎ましくて堪らないから物語は転がるのだが。
本作の場合、マシンなどで時空移動するのではないので、現在と同じ投宿先ホテルにタイム・スリップし、まったく同じ場所で、60年前の出来事と相成っていく。
ある意味、「念じれば夢は叶う」。様々な伏線が冒頭から描かれ、それが紐付けされていく愉悦から、どのような落としどころに戻るのかと推理しつつの鑑賞。
マネージャー役のクリストファー・プラマーの演技の上手さや、大メロドラマの秀作中の秀作デヴィッド・リーンの「逢びき」(1945)で非常に印象的に心に刻み込まれる、ラフマニノフの「ピアノ・コンチェルト」が、本作でも登場してくる。
あちらを知っている観客は「悲恋系感涙モノ」だと即座にスイッチが入る。
ジョン・バリーによる主題曲も美しく、どこか妙に「コロニカル風」な品格さをも感じた。
初見当時、自分の鑑賞記憶が混然一体となり、この手があったかと膝を叩いた。ポスターからの印象はコスチューム・プレイを楽しむ古色蒼然たるメロドラマだと思っていたからだ。
いやいやどうして、と好印象を持った。ただし、自分にも多少なりとも、欲しいとなったらそれに思考が支配される収集マニアの夢みるストーカー気質があるからかもしれぬが。