あの胸にもういちど – LA MOTOCYCLETTE(1968年)

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スタッフ
監督:ジャック・カーディフ
原作:アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ
脚本:J・カーディフ、ロナルド・ダンカン
撮影:ジャック・カーディフ
音楽:レス・リード

キャスト
レベッカ / マリアンヌ・フェイスフル
ダニエル / アラン・ドロン
レイモンド / ロジャー・マットン
レベッカの父親 / マリウス・ゴーリング
カトリーヌ / カトリーヌ・ジュールダン
ジャン / ジャン・レデュック
工事人 / ジャック・マーティン
フランス税関員 / アンドレ・マランヌ
フランス税関員 / バリ・ジョンソン

日本公開: 1968年
製作国: イギリス、フランス アレ・プロ作品
配給: 東和


あらすじとコメント

引き続きアラン・ドロン主演作。ドロンの魅力よりも、オートバイをセックスの象徴として描く意欲作。

フランス、ストラスブール夜明け前、傍らに眠る亭主レイモンド(ロジャー・マットン)から離れ、そっとベッドから起きる新妻レベッカ(マリアンヌ・フェイスフル)。

そして全裸に直接革製の全身用バイク・スーツをまとうと、次に裸足のままブーツを履いた。自分自身がケダモノになったような高揚感に包まれた。その燃え盛る気分のまま大型バイクにまたがった。

目指すはドイツのハイデルベルグ。そこに住む愛人の大学教授ダニエル(アラン・ドロン)に抱かれるためだ。近くのガソリンスタンド店主をたたき起こし満タンにすると田舎道を颯爽と国境に向け走りだした。

この分だと早朝には到着出来ると胸を膨らませて・・・

愛欲に溺れる新妻の疾走を描くドラマ。

優しい夫。ただし、優し過ぎて勤務先の小学生にまで小バカにされても、きちんと指導できないタイプ。妻を愛するがゆえに気を使い、妻の心情を理解しようと何処までも怒らずに対応してくれる。

ある意味、出来過ぎの亭主ではある。しかし、ことフランス人女性には物足りなさが際立ってくるという内容。

何不自由がないからこそ『刺激』を求める。それを教えてくれるのが、恋人を亡くし、以来一切他人を愛さないと決めた二枚目のインテリ教授。

ただし、肉欲だけは忘れず、溺れるし、相手をも篭絡していくタイプ。

10日ほど前に逢ったにもかかわらず愛人に教えてもらったオートバイにまたがり、再会しに向かう。

ただ、それだけの内容である。愛人との出会いや、思い出を幾つも思い浮かべながら、恍惚な表情を浮かべたり、感情的に涙がこぼれたりする様を描いていく。

つまり主役のドロンは思い出の中でしか登場してこない。生身の彼には到着してから思い切り抱いてもらおうと思っている。

ひたすら疾走するバイクとガソリン・スタンドや道端の安食堂、色目を使う国境職員などは現在の存在。それ以外の主要人物は思い出の中。

監督は撮影監督として有名なジャック・カーディフ。何本か監督もしているが、本作は実に意欲的な作劇に終始している印象。

白黒反転のモンタージュ画面にサイケデリック調な色彩を重ねる。派手なフラッシュ・バックや意味深なる突然のバイクや体の一部のアップ。

時間軸も一定せず、行ったり来たり。ストーリィは単純すぎるので、映像表現として腕を振るうことに専念した印象。

朝焼けの田舎町や、無機質な高速道路、林道や霧にむせぶ安食堂など、画面構成は実に綺麗ではある。

とはいっても内容が単純なだけに、それがどうしたという印象が勝る。唐突なラストも、それまで全体の流れを断ち切る印象。

ただし、それがヨーロッパ映画っぽさ、というか映像表現の多様化への挑戦であり、ゆえにカルト作として、絶大なる人気があるのかもしれぬ。

余談雑談 2021年7月24日
自室の窓。築57年、前の東京オリンピックの年に作られた老朽ビルなのだが、眼下は公園と川があり、見晴らしは良い。 何せ、古いので室外ベランダはなく、窓を開けると真下は一方通行の道路である。なのでエアコンの室外機は各室の窓にへばり付くように鉄枠