スタッフ
監督:ハーバート・ロス
製作:アーサー・P・ジェイコブス
脚本:テレンス・ラティガン
撮影:オズワルド・モリス
音楽:ジョン・ウィリアムス
キャスト
チッピング / ピーター・オトゥール
キャサリン / ペトゥラ・クラーク
校長 / マイケル・レッドグレイヴ
サタウィック卿 / ジョージ・ベイカー
バクスター / ジャック・ヘドレー
スタフェル / マイケル・ブライアント
校長夫人 / アリスン・レゲット
ウルスラ / シアン・フィリップス
カルバリー / クリントン・グレーン
日本公開: 1969年
製作国: 米・英 A・P・ジェイコブス・プロ作品
配給: MGM
あらすじとコメント
前回の「シーラ号の謎」(1973)の監督ハーバート・ロス。好きな監督で、ここでも数本扱った。なので、どうせなら監督のデヴュー作を紹介する。謹厳実直な教師の人生を描く巨編。
イギリス、ブルックフィールドこの地にある男子校に勤務するチッピング(ピーター・オトゥール)は、授業中、大実業家で多額の寄付をしている貴族の息子が、授業を早退してテニスの試合に行こうとしたのを制止した。結果、それが仇となり、チッピングの先行きが怪しくなっていく。
そんなことは気にせず、夏休みを利用してイタリアの遺跡巡りに出掛けた彼は、友人が思いを寄せている女優キャサリン(ペトラ・クラーク)と偶然、ポンペイの遺跡で再会した。
しかも止せば良いのに、何とか友人との間を取り持とうと躍起になる。しかし、あまりにもその態度が滑稽過ぎて、彼女に逆に興味を抱かれてしまい・・・
真面目な教師の生涯をミュージカル仕立てで描く長編作。
イギリス式ユーモアというよりも、滑稽で面白みのない男。授業を数分でも蔑ろにするのは授業料を支払う親への冒涜だと言い切るタイプ。
それでいて自分を卑下するし、でも、何でも後ろ向きということでもない。何ともチャーミングというか、憎めない性格。
幼い学生たちには理解し難いだろうが、女優であるヒロインは惹かれて行き結婚。
ところが、純然たる階級制度があるイギリスで、「女優」という立場がどのような眼で見られるのか。今度は差別とも対峙しなければならなくなる。
主人公にとっては、波乱万丈な展開なのだが、冷静にというか、日和見とは違うスタンスで飄々と乗り越えていく。
そこにミュージカル調が突然挿入されるから、若干の違和感を禁じ得ない。
原作はジェームス・ヒルトンによるもので1939年に映画化され、舞台でも何度も上演された作品。
時代設定などは微妙に違うが本作では、1924年から第二次大戦終了時までが描かれる。
実業家という金持ちの傍若無人な態度から、何ともリベラルというか、独自な価値観を持つ舞台関係者、生徒だって時代によってタイプが違っている。
それらと主人公の実直さと不器用さを対比させつつ、人間の一つの生き様を提示してくる。それをどう感じるかは個人差があろう。
青年から老年まで演じ切るオトゥールも素晴らしいが、ヒロイン役のペトゥラ・クラークも捨て難い魅力がある。
長いがバランスの取れた作劇で飽きることはない作品。