スタッフ
監督:ハーバート・ロス
製作:ハーバート・ロス
脚本:ニコラス・メイヤー
撮影:オズワルド・モリス
音楽:ジョン・アディソン
キャスト
ホームズ / ニコール・ウィリアムソン
フロイト博士 / アラン・アーキン
ローラ / ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ワトソン / ロバート・デュヴァル
モーリアリティ / ローレンス・オリヴィエ
ラインスドルフ男爵 / ジェレミー・ケンプ
ローウェンスタイン / ジョエル・グレイ
フリーダ / アンナ・クェイル
フロイト夫人 / ジョージア・ブラウン
日本公開: 1977年
製作国: ウィニッキー&セラーズ・プロ作品
配給: ユニバーサル、CIC
あらすじとコメント
前回はハーバート・ロス監督のデヴュー作を紹介した。今回もロス監督作品で、有り得ないストーリィをここまで丁寧に作るとはと驚き、思わずニンマリした快作。
イギリス、ロンドンベーカー街に住むホームズ(ニコール・ウィリアムソン)宅を訪れるワトソン医師(ロバート・デュヴァル)。コカイン中毒で禁断症状がでたホームズが、モーリアリティ教授(ローレンス・オリヴィエ)を探せと大騒ぎしだしたからだ。すべての犯罪に彼が関わっており、自分への危害をも考えていると。
教授の下を尋ねたワトソンは、ホームズと兄の子供時代の家庭教師だったことを知る。当然、教授は身に覚えのまったくないことで困惑するしかないと。それを話すとホームズは妙に口ごもった。何かあると感じたワトソンは、昨今話題のウィーン在住の心理学者フロイト(アラン・アーキン)に治療させようと考えた。
しかし、フロイトはこちらまで出向いてくれれば治療すると返答。ロンドンを離れることを極端に嫌うホームズに、いかにしてウィーンまで行かせようかと・・・
想像上の名探偵をまるで実在するかのように描いた快作。
冒頭、ワトソンの独白で「1891年、ホームズは3年間失踪してた。これはそれに関する物語である」と。
そしていきなりコカイン中毒で狼狽し、幻覚を見て叫ぶホームズの場面となる。妙味あるスタートだ。
小説では宿敵のモーリアリティだが、かつてホームズ兄弟の家庭教師をしただけだと狼狽える気弱な老人として登場。
おいおい、本当に宿敵なのかと、意表を付いてくる。そこに持ってきて、実在したフロイト博士が登場し、治療に当たる。この混在ぶりが面白かった。
続いて、ウィーンで催眠治療を受け始めると事件発生で、そこは中毒症状が途切れた状態のホームズだと、例の如く明晰に分析。しかも、犯罪被害者がフロイトの患者だったことから、今度はフロイトまでがホームズに影響され、明晰な推理を始める始末。
ところが、いかんせん中毒患者であり、ホームズは、ちょいちょい禁断症状を発症する。
何とも素敵な展開だと微笑んでしまった。しかもフロイトがユダヤ人であり、ドイツの男爵から執拗な蔑みを受けているという設定。
人を喰いながら、実に妙味のある筋運び。ホームス小説の読者であれば、これはあの話だなと、ニンマリすること請け合いである。
しかもホームズ、モーリアリティ、マドンナ役のヴァネッサ・レッドグレーヴなどはイギリス人でいかにもだが、ワトソン役のロバート・デュヴァルやフロイト役のアラン・アーキンに見事なまでの英語発音をさせ、本格的イギリス映画の態で攻めてくる。
しかし、れっきとしたアメリカ映画で監督はハーバート・ロス。脂の乗っている時期で、アクションありの洒落たコメディ進行で、実に愉快で、何ともチャーミングな作品。