心の旅路 – RANDOM HARVEST(1942年)

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スタッフ
監督:マーヴィン・ルロイ
製作:シドニー・フランクリン
脚本:クローディン・ウェスト、G・フローシェル、他
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
音楽:ハーバート・ストサート

キャスト
レーニア/スミス / ロナルド・コールマン
ポーラ / グリア・ガースン
ベネット医師 / フィリップ・ドーン
シェルドン / オーブリー・メイザー
キティ / スーザン・ピータース
レイニアの兄 / アーサー・マーゲットソン
シムズ医師 / ヘンリー・トラヴァース
ビファー / レジナルド・オーウェン
ハリスン / ブラムウェル・フレッチャー

日本公開: 1947年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: MGM、セントラル


あらすじとコメント

前回扱った「シャーロック・ホームズの冒険」(1974)は、濃霧の夜に記憶喪失の女性がホームズ邸に来て、そこからミステリアスな展開になる話だった。イギリスで「濃霧」、そして「記憶喪失」とくれば、この映画を外すわけにはいかない。イラストレーターで大の映画ファンであった和田誠のファンなら知っているかもしれない「豆スープのような霧だ」の台詞がでてくる、良く出来たミステリー系メロドラマの佳作。

イギリス、メルブリッジ1918年、第一次大戦終盤の頃、丘の上にある精神病院にドイツとの捕虜交換で帰国したが、一切記憶がない仮称スミス(ロナルド・コールマン)が入院していた。

どうやら彼はフランス戦線の塹壕で意識不明のままドイツの捕虜となり、帰国したらしいが本人も何ら覚えていない状況。今日も、もしかして息子ではないかと夫婦が面会に来たが、別人だった。

消沈した彼は、夜半に病院を抜けだし、下の町に彷徨いでた。丁度、戦争が終わり、町は騒乱状態。雰囲気に飲み込まれ気分が悪くなるスミス。そんな彼を踊り子ポーラ(グリア・ガースン)が認めて・・・

『二重記憶喪失』という珍しい設定のミステリー系メロドラマの良作。

記憶喪失の将校に寄り添う決心をした踊り子と結婚して、田舎で慎ましくも穏やかな生活を送り、やがて一児を儲ける主人公。

そして彼の書いた小説が新聞社の目に留まり、新作依頼を受けるために単身、都会に出向いて行く。

そこから波乱の第二幕に転換するのだ。何と、その地で交通事故に遭い戦時下の塹壕以前の思い出が甦る。

つまり、今度は直前までの踊り子との3年間の記憶が喪失するのだ。そして本来の彼は、裕福な名門家庭の次男坊であった。帰宅すると、丁度、父親が死んだ直後。

あれよあれよと会社を継承し実力を発揮して工業界のプリンスとなっていく。当然、若い美女が近付いてきたりと波乱の展開となる。

彼が残してきた踊り子の妻と幼子はどうなっているのかと観客の不安を駆り立て、主人公も常に、何かモヤモヤした気分を引き摺っている。

思い出せそうで出せないジレンマ。しかし、実業家としての手腕を益々発揮し続けて、思い出す暇もなくなるほど多忙になる。そして更に大波乱の第3幕に移行。

この突然の変調には驚いた。益々、こちらの心理的混乱と精神的追い込まれ感が混然として行く。すれ違いとは言わないが、ハラハラさせられ続ける展開。

マーヴィン・ルロイ演出もシャープ。ハッとするサスペンスフルな場面や、リズミカルなカット割りで、単なるメロドラマに陥らせない手腕も見事。

主演のコールマンとグリア・ガースン双方とも不安定な状態をさり気なく漂わす演技で、こちらの心をくすぐってくる。

記憶喪失症状の扱いに関しては時代性もあり、異論はあろう。それでも古典作としては上出来の部類に入る良作である。

余談雑談 2021年9月4日
一体、自分とは何ぞや、と。40年近く前、何が原因か解らぬが、突如、股を開くと激痛が走るように。 困っている自分を見かね、知人が柔道整体系マッサージ的なものを受けてみたら、と紹介してくれた。 恐る恐る行ってみると指圧系や骨盤矯正など、一時間程