俳優の訃報。ジャン・ポール・ベルモンドである。一時期、フランス人俳優としてはアラン・ドロンと人気を二分していたことがある。
ドロンはいかにもの「二枚目」で若い女性たちに絶大な人気があった。個人的には妬みが最優先だが、『怪しげな』とか『胡散臭い』というイメージが付き纏っていた。
一方でベルモンドは、肉体アクションも吹替えなしで挑むし、面倒臭いヌーヴェルバーグ作品に出る演技派という、極端な上手さを感じさせた俳優。
ベルモンドに関しては、今後上でも特集を組む予定がある。軽妙でジャッキー・チェンにも影響を与えた「男」シリーズや、渋系作品も浮かぶが、フランスの重鎮ジャン・ギャバンと共演した「冬の猿」(1962)が大好きだ。
ドロンもギャバンとは共演しているが、大御所と対等に渡り合って秀逸であった。特に、地味な役所のときはドロンとは違う男としての脆弱さが上手いと思った。
吹替は山田康雄であり、アニメ「ルパン3世」の主役は、完全にベルモンドのイメージそのもの。だから山田康雄を起用したのは有名な話。
そうしたら、今度はルパンでの次元大介役声優である小林清志が引退するという報が飛び込んできた。
ともに88歳で『米寿』。小林清志はジェームス・コバーンとリー・マーヴィンの印象が強いが、「大統領の陰謀」(1976)での新聞社主幹役のジェイソン・ロバーツ役が印象的。
そもそも「ルパン三世」ってTVアニメは、当時アクション系の外国俳優のアテレコ声優とイメージを一致させるキャスティングだった。
今や専門スクールもあり、憧れの職業でもある「声優」だが、あくまで『アニメの』が付き、実際の俳優が出演している洋画の吹替は合わない印象が強い。
どうせ、こちとら昭和の生き残り。でも、信条は「不便な方が知恵が働く」。昔の吹替え収録の大変さを本で読んだことがあるが、TV用吹替収録の場合、CMまでのワンブロックが一発録音でNGが出ると全員でやり直し。
今じゃ見なくなった咥え煙草のアテレコは、煙草はボールペンで、葉巻は万年筆を咥えて収録したと。その万年筆だって、今じゃ普通に持ち歩かないよな。
きっと、今とは違う形のプロ意識があったのだろう。昔が良かったとばかり、後ろ向きが大好きな自分。
で、もう一人。「ルパン三世」には関しては、1974年に実写化され、次元大介役は田中邦衛。その彼も今年88歳で亡くなった。
否が応でも月日は流れるんだな。