皇帝円舞曲 – THE EMPEROR WALTZ(1948年)

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スタッフ
監督:ビリー・ワイルダー
製作:チャールズ・ブラケット
脚本:C・ブラケット、B・ワイルダー
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:ヴィクター・ヤング

キャスト
スミス / ビング・クロスビー
ヨハンナ / ジョーン・フォンテーン
ホレニア男爵 / ローランド・カルヴァー
ビトトスカ公爵夫人 / ルシル・ワトソン
ヨーゼフ1世 / リチャード・ヘイデン
侍従 / ハロルド・ヴァーミリア
ツヴァイバック / シグ・ルーマン
ステファニー大公妃 / ジュリア・ディーン
運転手 / バート・プライヴァル

日本公開: 1953年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: パラマウント


あらすじとコメント

「哀愁」(1940)で、主人公である将校の高貴な母親を演じたルシル・ワトソン。サイレント時代から活躍した傲慢な役が多い女優。そんな彼女が公爵夫人を演じた作品にする。名匠ビリー・ワイルダーらしいチャーミングな恋愛モノ。

オーストリア、ウィーン20世紀初頭、ここは皇帝ヨゼフ一世が治める地であった。そこに、どこか飄々としたアメリカ人セールスマンのスミス(ビング・クロスビー)が愛犬を連れ、皇帝に蓄音機を売りに来た。得意の口先で侍従を丸め込み、謁見の待合室に入り込んだ。

そこには様々な人間が陳情や挨拶に訪れていて順番待ちをしていた。その中に、没落寸前の貴族である叔父と一緒に、2年前に未亡人となった令嬢ジョアンナ(ジョーン・フォンテーン)が血統の良い愛犬を連れ待っていた。

すぐにスミスの愛犬と令嬢の愛犬が、睨み合いを始めた。しかもスミスの持ち込んだ大きなトランクに入っている蓄音機を覗き見た貴婦人が、これは爆弾だと騒ぎだした。きっと皇帝の暗殺に来た輩に違いないと警官隊まで駆け付ける大騒ぎになる。

結局、取り押さえられ、追いだされるスミス。消沈しているところに、ジョアンナが要件を終え、でて来きた。すると犬同士が大喧嘩を始めてしまう。

アメリカ人を蔑み、お宅の犬が悪いと鼻であしらったジョアンナに対し・・・

欧米の差が生む軽妙で楽しい音楽映画。

オーストリアでは未だ馴染みのない蓄音機を皇帝に売りつけようとするお調子者のアメリカ人。いかにも軽薄で厚かましい印象の主人公。

そして貴族であることを鼻にかけて蔑む伯爵令嬢。まさしく「水と油」である。

そんな彼らの仲を取り持つのが、互いの愛犬。貴族側は由緒正しい血統のプードル。方や雑種。

ところが、この雑種犬、蓄音機の横にちょこんと座るとオールド・ファンならお馴染みの「ビクター」のトレード・マークになるから可笑しい。

そして歌の上手いビング・クロスビーだけに、ヨーデルを含む歌も登場し、楽しませてくれる。

歴史と底の浅いアメリカ人と、気位は高いが、人間的な内容は大したことない貴族たちというクラスの違いを際立たせながら、結局は『犬』と大して、否や、犬の方が素直で協調性があると比喩するワイルダーとチャールス・ブラケットの脚本に妙味がある。

特に、ユダヤ系であるワイルダーは戦前、ドイツで映画に携わっていたが、ナチスの台頭で訪米した人物。なので欧米双方の様々な人間を見聞してきていたのだろう。

本作でもステレオ・タイプではあるが欧米間の相容れない価値観とマウントの取り合いという人間のもろさを漂わせ、それを微笑ましいコメディとして展開させ、皮肉が効きながらも解りやすい恋愛系音楽映画として結実させていく。

それでもやはり、セオリー通りで動物と子供には敵わないと教えてくれもする。

これも、うがった見方をすれば、異国の人間同士の諍いなどよりも、本能で喧嘩腰で吠え合ったりするが、これまた本能で単純に理解し合えるという比喩が浮かぶ。まさしく、そうなれば世界平和であるから。

それを見事に表現する犬たちの演技が、全てを掻っ攫っているのも、どこか冷めて、きっと人間嫌いだなと感じさせるワイルダーのイヤラしさに考え込まされた。

ただし、それ以上に微笑ましいのが前面にでている、肩肘張らずに楽しめる娯楽作である。

余談雑談 2021年9月18日
今年はどんな秋になるのか。というよりも、春と秋は短縮化され、いきなり「暑い」とか「寒い」が来るようになると言う気象予報士もいる。 四季のメリハリがなくなり、急激な変調にこちらの体がついて行かないといけないらしい。もしそうなれば、新しいことが