解放感に満ちた初冬。待ち焦がれ過ぎて、深夜までの飲酒自由が、逆に虚しさを感じさせもするのは何故に。
さて、旅の続き。メニューがイメージと違った居酒屋ではなく、馬肉焼き肉屋にした会津若松初めての夜。
不便な立地ながら、そこが大正解。住宅地の一軒屋で、中は割と広い。先ず、馬焼き肉の盛合せで様子見。カルビや内臓系が数枚づつ、四種。
その中からお気に入りを別注文。出て来ると明らかに色なりが違う。成程、同じ部位でも単品だとモノが違うのね。
そして久方振りの牛カルビ。『和牛A5ランクのみ』と謳い、数種あるが、一番安い奴だよな。これも驚いた。この値段で、まるで『大トロ』。リピート店に決定。もし、また会津に来られたらだが。
他には一番高い「上タン」なるモノがあったが、それはどれほど美味いのかと妄想が膨らんだが、腹も膨らみ、辿り着けず。それにしても量が食べられなくなったと消沈し就寝。
翌朝も雨模様。温泉旅館までの予定を立てる。唯一、行きたかった「さざえ堂」に行き、ランチだな。
循環ミニバスで朝10時の開場に合わせて向かった。雨でもそれなりの観光客で、県内小学生の課外授業らしい集団も。雨の中、御苦労なこった。
まっすぐ伸びた長い階段が続く小さな山の上にあるらしく、階段横には課金式エスカレーター。後は、緩やかで時間はかかるが、無料の参道が横にある。早い所為か、はたまた雨だからか誰も向かっていない。となれば性格上、そちらに決定。
民家だけが並ぶ、参道とは思えない場所から山道へと入っていく。誰もいず、静か。最後は、やはり石段だ。どれほどの人間が昇降したのかと滑落に留意し、へこんで濡れてる石の階段を静かに上り、小森の先の雨に佇む、さざえ堂が見えた。
誰もいないルートで、タイムスリップ感が満載で嬉しくなった。アプローチとしては、絶対にこちらで正解だ。
内部は面白いが、急な回廊で板敷。そこでも滑りそうで、注意深くなる。それなりに人もいたので、そそくさと退散。
ミニバスで、昨日目星を付けていた食堂へ行こうと思ったが、定休日。他にカフェや郷土品店もだ。きっと同曜日に定休が集中する場所か。
さて、困ったと思いつつ駅に戻る。『創業百年』と書かれた、それも随分と前の看板が掲げてある食堂は営業中。他は観光客専用な店ばかりで選択肢はないし、美味求食センサーも激しく同意している。
引き戸を開けると別世界。完全に『ザ・昭和』であり、まだこの古臭いままの食堂が残っていたかと大感動。
イスやテーブル、地元会社の風景写真付き壁掛けカレンダー、建付けの悪いドアの便所、積まれた雑誌など、すべてが昭和のまま。割烹着を着たお母さんに、決して若くない娘か嫁か、バイトだかが差配している。
名物の「ソースかつ丼」にラーメンやそばの麺類が並ぶ。迷わず大瓶ビールと玉子焼きに野菜炒めだ。玉子焼きは、出汁巻きで甘めだが、大根おろし付きで200円。実に正しい食堂だ。
嬉しくて大瓶二本も飲み、〆にソースかつ丼。まだ雨だが、腹ごなしに散歩し、循環バスで行ける温泉へ。木造ながらそれなりに大規模の古い旅館に辿り着く。
昔の湯治場用、貸切、大浴場と種類もあり、料理も品数多数だが、少量づつで想像以上だった。最安部屋だったが、広さは十分。客室担当はヴェトナム女性だが、流暢な日本語で長々とマニュアル的説明をしてくれた。
ただ、館内は不倫カップルみたいのが数組出没。ある意味、羨ましいとも思ったが、何故に髪をそこまで黒く染めるのかというゴルフウェアを着た日焼けオヤジと、完全未使用の脳ミソの錆が浮き出た髪色の寸胴体型の若い女性という、いかにも地方のスナックでの協力関係てなカップルばかりだが。
個人的美観だが、決して詫び感漂う老舗木造旅館には似合わないと思った。まあ、夕朝とも部屋食なので顔を合わさなかったのが幸い。
翌朝、会津を後にし、途中駅で乗継ぎ待ち。そこには酒の試飲自販機があり、三種ほどチャレンジ、というか嬉しく楽しんだ。
そして、いつもの鄙びの温泉へ。旅館でも行きつけの飲食店でも歓待。帰るときだけ晴天の暫く振りの湯あたり覚悟の旅行であったが、やっぱり、これがなきゃ人生は楽しくないなと実感した次第。
溜まった鬱憤晴らしは飲酒の他に温泉旅行で取り戻せ、か。