秘境ザンジバー – WEST OF ZANZIBAR(1954年)

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スタッフ
監督:ハリー・ワット
製作:レスリー・ノーマン
脚本:マックス・カットー、ジャック・ウィッテンガム
撮影:ポール・ビーソン
音楽:アラン・ローソン

キャスト
ペイトン / アンソニー・スティール
マリー / シーラ・シム
ドーファー / マーティン・ベンソン
キゴニ / ピーター・イーリング
ウッド / ハワード・マリオン・クリフォード
ジュマ / ジュマ
アンブロース / デヴィッド・オシール
ティム / ウィリアム・シモンズ
ウシンゴ / オーランド・マーティンス

日本公開: 1954年
製作国: イギリス マイケル・バルコン・プロ作品
配給: BCFC NCC

前回の「裸のジャングル」(1966)は、白人ハンターが象牙の密猟をした挙句の災難を描いた作品だった。今回は、逆な見地からの作品。だが、絡むのは同じく象牙の密猟と密輸。

アフリカ、ケニヤガラナ族が住む集落は日照りが続き土地が枯死してしまった。族長ウシンゴはイギリスの狩猟監視官ペイトン(アンソニー・スティール)の勧めで丘陵地帯への移住を考えた。

ところが族長の息子を含む若者らは、それに反対し文明が開化している港町モンバサへの移住を希望した。昔なら族長の一言で結束したが、今や民主主義の影響もあり投票で決することにした。

結果、若者らの造反でモンバサに決定。しかし、と言うか当然と言うか、若者たちは一挙に悪影響を受け象牙の密輸に加担するようになり・・・

文明が現地にもたらす悪影響を描く娯楽活劇編。

アフリカの自然の脅威や生態を見せる娯楽作である一方、朴訥な原住民たちが時代に流され白人支配の影響下で悲劇性が増していく姿を描く社会派問題作でもある。

製作は『バルコン・タッチ』というドキュメンタリー画像と劇映画を違和感なく結合させる手法を確立させたマイケル・バルコン。そしてその手法を見事に結実させる監督ハリー・ワットのコンビによるもの。

「ナショナル・ジオグラフィック」のような動物の生態や残虐性などリアルな画像をインサートさせ、人間場面を編集で上手く繋ぎ、まるで本当に格闘しているように見せたり、コバンザメを使ってウミガメを捕獲する場面では海中カメラでのドキュメンタリー映像と船上の原住民との駆け引きを上手い編集で繋ぎ臨場感たっぷりに映しだす。

主役はイギリスの狩猟監視官だが、原住民らに悪影響が及ぶことを危惧しながら、ヒーローよろしく単独で密輸団に対峙したりする内容で、当時としては謎に満ちたというか、実際の生態系を知らない日本人にとっては、それなりに冒険活劇として認知されたのだろうか。

確かに、でてくる動物たちはすべてがホンモノであり、作り物ではない迫力の連続である。

ただし、現在では更に進化した画像が主流であり、本作のような『バルコン・タッチ』的人間との絡みは合成感が際立ち、興醒めしてしまうかもしれない。

それでも有名俳優やヴェテラン名優を起用しなくても充分に観光映画としても堪能でき、問題提起もしつつ娯楽活劇として楽しめる。

敢えて地味な作劇と進行に徹しているのもイギリス映画らしい実直さを感じる。セットではなく、ほぼ全編がロケ撮影でもあり、第二次大戦後9年経った当時のアフリカの実態を知るには好都合の作品でもある。