スタッフ
監督:マーク・ロブスン
製作:マーク・アデルソン、M・ロブスン
脚本:エイブラハム・ポロンスキー
撮影:ジャック・カーディフ
音楽:アリン
・ファーガソン
キャスト
ウォーグレイヴ / リー・マーヴィン
マレンコフ / ロバート・ショウ
エルザ / リンダ・エヴァンス
ブーニン / マクシミリアン・シェル
ハーラー / マイク・コナーズ
ショルテン / ホルスト・ブッフホルツ
ネッカーマン / アーサー・ブラウス
リロイ / ジョー・ネイマス
モリナーリ / クラウディオ・カッシネッリ
日本公開: 1979年
製作国: アメリカ ロリマー・プロ作品
配給: 日本ヘラルド
あらすじとコメント
寒い場所で繰り広げられる米ソの派手なスパイ・アクション。大掛かりな特撮でスケールさをだそうとしているのは「北極の基地/潜航大作戦」(1968)と同じ。そして出演陣はこちらに軍配が上がるが、それ以外はどうなのか。
イタリア、ミラノソ連内でタカ派とハト派の覇権争いが激化しているとの情報を得た西側情報部。タカ派が権力を握れば重大な局面を迎えると注意深く情報収集に当たる各国。
続いて中間派のマレンコフ(ロバート・ショウ)が、細菌攻撃に関する極秘情報を持ち亡命を希望しているらしいとの新情報が飛び込んでくる。真偽のほどを確かめつつ、無事に亡命をサポートするよう指令を受けたのがウォーグレイヴ(リー・マーヴィン)である。
彼は西側各国のエージェントと協力し、ミラノからオランダのアムステルダムへ向かうアトランティック急行に同乗することにした。
だが、当然ソ連側にもその情報は漏れており・・・
亡命者と極秘情報を巡る攻防を描くアクション大作。
ソ連のタカ派が独断で立案した細菌攻撃計画。それを中間派スパイが手土産として亡命を希望。当然、西側に渡すものかと必死に奪還、もしくは本人を亡き者にしようと大仕掛けでくる。その攻防戦を描く巨編である。
だが、普通であればソ連内部でもタカ派の動きを止めようとするグループがいてもおかしくはないはずなのだが、あくまで単独亡命者のみがハト派だとばかりに一切合切を背負わせる大胆な発想。
西側もメンツをかけて亡命を成功させたい。そこで追いつ追われつや、裏をかく作戦が繰り広げられるわけだ。
ところがソ連側タカ派の一部がまるで単なるテログループ的暴挙にでるというのも首を傾げる。つまり、設定そのものに無理があるし破綻している。じゃなきゃ、ソ連はタカ派が牛耳っていて首脳部も西側との戦争を期待してるようにしか見えない。
つまりソ連首脳部が同意なり、許可をするのかという素直な疑問。何せ、スイスの列車指令所を乗っ取り爆弾まで仕掛け巨大雪崩を起こし、それで列車を転覆させようとする。
しかも当然、それだけの大規模雪崩を故意に起こせば、列車のみならず甚大な被害が出るのは百も承知だろう。もしかして 当時のソ連は核爆弾よりは断然被害が少ないからマシであるという発想か。
果たして、その通りに一般市民たちが阿鼻叫喚と共に雪崩に巻き込まれていく特撮は大迫力ではあるから映画的興奮は喚起される。
だが、内容は完全に細菌を浴びたテロリストが国際列車に逃げ込み、軍上層部が列車ごと口封じで処分しようとする「カサンドラ・クロス」(1976)のパクリ。
本作では当然、雪崩の難をかろうじて逃げ切るのだが、まるで「大陸横断超特急」(1976)の終盤と同じ。
つまりオリジナリティがない上に、ほんの数年前のパニック大作からの「頂き」。
しかも雪崩は中盤のヤマ場でありラストには別なアクションが展開されるのだが、雪崩以上の迫力もないし、どうにも雪崩と共にすべてが崩れ去った印象。
本来は御贔屓俳優で主役リー・マーヴィンだっていかにもタフな役者だが、スパイの敏腕エージェントのイメージはない。
相手役のロバート・ショウはそれなりにロシア系を演じているが、本作が遺作である。監督のマーク・ロブスンも数々のそこそこアクション作を輩出してきたが、やはりこれが遺作になった。
その二名の遺作が本作かと思うと流石に、何とも言えぬ感慨が渦巻いた。
70年代はパニック映画が流行し、本作もその系統である。それなりのキャストを集め大雑把な展開と作劇。
やはり、パニック大作群で何とか息を吹き返したが映画界も終焉に向かうだろうと確信させられた作品でもある。