スタッフ
監督:テレンス・ヤング
製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ
脚本:リチャード・メイホーム、B・マーサー 他
撮影:テッド・ムーア
音楽:ジョン・バリー、モンティ・ノーマン
キャスト
ボンド / ショーン・コネリー
ノオ博士 / ジョセフ・ワイズマン
ハニー / ウルスラ・アンドレス
ライター / ジャック・ロード
M / バーナード・リー
マネーペニー / ロイス・マックスウェル
デント教授 / アンソニー・ドーソン
Q / ピーター・バートン
シルヴィア / ユーニス・ゲイソン
日本公開: 1963年
製作国: イギリス イーオン・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の「アバランチエクスプレス」(1979)で亡命ロシア人を演じたロバート・ショウ。彼がロシア人でスパイものとくれば「007危機一発」(1963)を思い浮かべる人もいようか。しかし既に扱ったのでシリーズ第一作にする。以後のスパイ・アクションを一変させたスマートな佳作。
イギリス、ロンドン任務遂行のために殺人行為を許可されたごく僅かな秘密諜報部員007ことボンド(ショーン・コネリー)が召喚された。
アメリカのフロリダにある基地から発射されたロケットが何者かによる妨害電波攻撃を受け墜落するという事故が起き、調査していた英国諜報機関の現地支局長が殺害されての緊急事態対応のためである。
CIAからの要請もあり早速現地に飛び、調査に乗りだすボンド。すると沖合の小さな島を所有している中国系のノオ博士(ジョセフ・ワイズマン)が、何やら関係していそうだと知り・・・
スパイ・アクション映画の歴史を作ったシリーズの第一作。
キザでスマートでクール。まるでスーパーマンだ。その上プレイボーイ。
今までになかったスパイ像を作りだした原作はイアン・フレミング。映画化までも主役を誰に演じさせるとか、監督はどうするとか紆余曲折があった。
結果、それらが見事に絡み合い昇華したのが本作。特に抜擢されたショーン・コネリーは、パッとしない粗野なイギリスの田舎者的印象の脇役だっただけに、以後の俳優人生が一変したのだから面白い。
作品自体も、銃口が007を狙うが逆に撃たれて血が流れるファースト・シーンからエレキギターによる忘れ難いテーマ音楽が続き、各作品ごとの音楽にシフトしていく。
本作では、三人の盲人が金乞いしながらキューバの町を歩くというコメディっぽく始まるが、直後に変調する。その絶妙なるリズム感の愉悦。
その後も実にスマートなコメディ的要素もあり、今度は急にサスペンス調にシフトしたりと自在にリズム感を変えつつ、きちんと筋の一本通った王道イギリス製スリラー活劇の流れを踏襲している。
細かい設定や微妙で思わせ振りな展開は、誰が見ても解りやすく、以後、相当数のインスパイアされたパクリ映画が世界各国で作られたのだから、間違いなく歴史的金字塔でもある作品。
娯楽作の王道を行き、メリハリにエッジが効き、緩急が見事についた安定的リズム感。特にボンドの初登場シーンでは、中々顔を見せず、やっと映ったと思ったら、不敵に笑って名乗る。
男性も女性も憧れるキザな男の代名詞にもなったのも頷けるし、名物にもなる『ボンド・ガール』のウルスラ・アンドレスの白い水着で海から上がってくる場面など、忘れられない。
彼女に限らず、様々な美人からモテモテで、それなりにエロティックだが、下品にならない際どさも見事。
つまりバランス感覚に富み、実にリズミカルな進行を見せる佳作。