ベネチタ事件 – VENETIAN AFFAIR(1966年)

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スタッフ
監督:ジェリー・ソープ
製作:ジェリー・ソープ、ジャック・ニューマン
脚本:ジャック・ニューマン
撮影:ミルトン・クラスナー
音楽:ラロ・シフリン

キャスト
フェナー / ロバート・ヴォーン
サンドラ / エルケ・ソマー
クレア / フェリシア・ファー
ウォール / カール・ベーム
ローゼンフェルド / エドワード・アスナー
ジュリア / ルチアーナ・パルッツイ
ヴォージロウ博士 / ボリス・カーロフ
バラード / ロジャー・C・カーメル
アーヴァン / ジョー・デ・サンティス

日本公開: 1967年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: タイヘイフィルム


あらすじとコメント

今回も、かつてCIA所属であったが現役のプロではない人物のスパイ系アクション作品。有名観光地ヴェネツィアで繰り広げられる報道カメラマンの活躍と葛藤を描く小品。

イタリア、ヴェネツィア国際平和会議が開かれる会場で爆発が起き各国代表の十数名が死亡する事件が発生。原因は自爆テロで何と犯人はアメリカ代表。当然、世界で報道されアメリカの通信社の記者フェナー(ロバート・ヴォーン)が取材のため派遣された。

現地に着くと支局長とは別にCIAエージェントのローゼンフェルド(エドワード・アスナー)も彼を待っていた。実はフェナーは元CIA局員でローゼンフェルドは彼を解雇した張本人だったのだ。

しかも今回の派遣、実は彼からの依頼。自爆テロを起こした博士と親密な関係を持つ女性がフェナーの元恋人サンドラ(エルケ・ソマー)でありテロ以後姿を消したのだ。しかも付き合っていた当時から敵側のスパイではないかと疑っていたのだ。

そんなことは信じたくないフェナーは、逆に彼女の無実を証明しようと協力することにしたが・・・

機密文書を巡るスパイ戦に巻き込まれる男を描くスリラー。

解雇された恨みを持ちながら原因となった元恋人を異国で探すことになる主人公。

果たして元恋人は敵側スパイなのかという謎解きでもあり、なぜアメリカ代表の博士が自爆テロを起こすに至ったのかとか、別な政治学者が何やらヒントを持っていると思わせたり、それなりの進行を見せる。

だが、カギとなる機密文書が一体何であるのかは、さほど重要ではない扱いだ。これはヒッチコックが得意とした『マクガフィン』という手法で、秘密そのものより展開に妙味があれば秘密の内容は些末なことになるというもの。

とはいっても進行や撮影方法に妙味があればの話で、キャストから監督に至るまでどうにも華がない。

主役のロバート・ヴォーンはTVシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」で人気を博したが映画では脇役ばかりであった。

そんな彼が劇場版「ナポレオン・ソロ」シリーズ以外での初主演作で張り切っているのは分る。同一キャラで強烈な印象を付けられた俳優が脱却を試みて熱演しようとする。

しかし、それなら元CIAという設定だけで、いかにもソロを連想させるので、違う役柄設定の方が良かったのではないだろうか。

時代性があるにせよ内容にもかなり無理があるし、恋愛感情や人間性よりも何とも非情な世界が存在すると提示してくるのだが、元恋人の真実、機密文書と自爆テロの関連性やら、アクションや人間描写でのチグハグさが勝る。

観光紹介映画的な面と謎めいた古都のミステリアスな部分を共存させようとしているが、それも中途半端。

全体的に地味系ではあるが所々頑張っている場面もあるので、そのあたりは評価したい。それでも内容は些か荒唐無稽なTVドラマ的であり、それなりの予算を掛けているが本作の3年後に製作された「火曜日ならベルギーよ」(1968)におけるカメオ出演で同じヴェネツィアで観光カメラマン役を演じたヴォーンの方が、余程面白いと感じる。

もしかして本作での反省を表したのではと連想してしまった。残念ながら、そのレベルな出来の作品。

余談雑談 2022年6月4日
まったく、自分の欲望最優先だからな。思い起こしても、猛烈サラリーマンとか、終身雇用で完全解雇されるまで頑張って仕事にまい進する方向性とは真逆の感覚で生きてきたよな。 つまりストレス溜めてもバランスを取ろうとする、横並び的価値観の人々の概念か