殺しのダンディー – A DANDY IN ASPIC(1968年)

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スタッフ
監督:アンソニー・マン
製作:アンソニー・マン
脚本:デレク・マーロウ
撮影:クリストファー・チャリス
音楽:クィンシー・ジョーンズ

キャスト
エバリン / ローレンス・ハーヴェイ
ギャティス / トム・コートネイ
キャロライン / ミア・ファロー
ソバケヴィッチ / ライオネル・スタンダー
フレイザー / ハリー・アンドリュース
カッパーフィールド / ノーマン・バート
プローグ / カルヴィン・ロックハート
プレンティス / ピーター・クック
ミス・フォグラー / バーバラ・マーレイ

日本公開: 1969年
製作国: アメリカ アンソニー・マン・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

今回も陰謀渦巻くスパイの世界を描いたものにする。アクション先行ではなく、地味ながら騙し合いの駆け引きと閉塞感に追い込まれる非情な世界を見せてくる作品。

イギリス、ロンドン北アフリカで英国諜報部員が暗殺された。これで3人目だった。

ことを重く見た上層部は、暗殺者はソ連の工作員クラスネーヴェンだと確信。その彼がベルリンに潜伏しているらしいとの情報を得るとヴェテラン諜報部員エバリン(ローレンス・ハーヴェイ)に、彼を見つけ出して殺害せよとの命令を下す。任務完遂のため、更に若くて野望に燃えるギャティス(トム・コートネイ)を助手に付ける念の入れようだ。

驚くエバリン。何故なら彼こそ二重スパイのクラスネーヴェン自身だったからだ・・・

自身への暗殺指令を巡る駆け引きを描く心理スリラー編。

二重スパイ活動に疲れ、ソ連へ戻りたいと心底願っている主人公。

しかもクールでダンディーでもあるが、若い女性写真家と知り合うと現実逃避にも走る脆弱さをも持っている。その相手である若い女性も性に奔放だが、どこか掴みどころがないタイプ。

彼女は友人とヨーロッパを旅して写真を撮っているのだが、偶然、ベルリンで再会したりするから妙な雲行きになっていく。

ところがイギリス側が盗み撮りに成功した暗殺対象者は主人公自身ではなく、彼の仲間。その誤認を利用できないかと。

結果、混乱させつつ亡命的に西ベルリンから東側に入国しようと試みるも、何とソ連側から拒否されてしまう。まだ敵側で潜入活動をしろということかと失望する主人公。

まして主人公には彼こそ暗殺者ではないかと勘繰る上昇志向の強い若手諜報員が同行し、常に試すような言動を取ってくる。

果たして、正体はバレているのかというサスペンスと、更に外国女性のナンパに精をだす、もう一人のマヌケな同行諜報員が話をややこしくしたりする。

主人公がどこに着地していくのかという不安を増幅させる展開。その中で強調されるのは人間性を排除された非情な世界と、絶望感に苛まれる姿。

一方で、ヒロインはどこか『不思議ちゃん』的なキャラで、彼女もどちら側かの諜報員なのかと邪推も入ってくる。

主人公の設定はスマートではない悩めるジェームス・ボンド的でもあり、それをイギリスのシニカル設定で進行する重い人間ドラマの印象。更に、様々な伏線的展開を感じるが、それらが上手く機能しているとは言い難い部分もある。

どのような人生のバックボーンがあり、なぜスパイになったのか不思議に感じる性格設定も散見する。

確かに暗殺マシーンでもある主人公の殺し屋としてのクールな場面もなく、ひたすら人生に疲弊して母国に逃げ帰りたいというジレンマとそれが阻害される心理的圧迫を描いていく進行。

登場人物それぞれの個性よりも、非人間的になっていくのが共通認識という前提をも感じた。

結果、スパイの非情な世界と東西両組織が部員たちをどのように扱っていくのかという冷酷さを見せてくれる作品。

余談雑談 2022年7月23日
北海道訪問の続き。一泊目の札幌の夜は、現地在住の友人より、こちらの嗜好性を知っている伝手からの情報が大正解であった。 いかにも古ぼけた「コの字居酒屋」で、北海道らしい「棒ダラ」、「にしん切り込み」が薄味で美味。しかも安いときたもんだ。流石だ