余談雑談 2022年9月10日

イギリスのエリザベス女王の訃報。少し前から体調がすぐれないと報道されてはいたが現実となった。

個人的には1975年に訪日したときが思い出される。間違いなく自分の人生を大きく変えた出来事だったから。

東京京橋にある当時の「東京国立近代美術館フィルムセンター」、現「国立映画アーカイブ」で女王訪日記念として秘蔵の古いイギリス映画や英国から貸し出された未見の作品を多く上映した。

それが自分のある意味でのイギリス映画の原体験であった。タイトルだけは聞いたことがあったが、一生観られないと思っていた映画が多く上映。ほぼ毎日通った。

その時から古いイギリス映画に興味を持った。今の人たちには理解しづらいかもしれぬが上映ブザーが鳴り、照明が消され緞帳が開き、白いスクリーンに映像が浮かんでくる。しかも観客は必死に鑑賞しようとする同好の士。凄い一体感だった。

その時の緊張感とエクスタシー。当然、ポップコーンの匂いもドリンクの氷がぶつかる音もない。全員がスクリーンを凝視し統一体験を味わう。

ほぼ全作が白黒映画。確かに場末の映画館で何度も白黒映画は見てきた。しかし、そこで観たものは『格』が違った。

価値観を変えられた。大きなスクリーンでフィルム上映の白黒映画を見つめ、見えない色彩を想像する愉悦も教わった。これはクリアなデータや、レストアされたものでなく傷で雨が降るように見えるオリジナルのフィルムだ。しかし、それでも保存状態がほぼ完璧。

その時に見た映画は殆どここで扱ってきたし、以後も扱う予定である。現にこのメルマガは発行して17年になるが、第1回目に扱った映画はそこで鑑賞した英国製の戦争映画「恐怖の砂」(1958)である。

そこでの経験があるから、このメルマガは始められたし、継続し続けられている。そういう意味でも、女王陛下のご冥福を祈念するしかない。

でも、あの時の作品群を再度フィルムで鑑賞してみたいものだ。きっと、また新たに人生の価値観が激変するかもしれないから。

否や、今だからこそ必要かもしれぬ。

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