スタッフ
監督:バド・フリージェン、マイケル・J・シェリダン
製作:B・フリージェン、M・J・シェリダン
脚本:B・フリージェン、M・J・シェリダン
制作総指揮:ピーター・フィッツジェラルド
音楽:マーク・シェイマン
キャスト
彼自身 / ジーン・ケリー
彼女自身 / エスター・ウィリアムズ
彼女自身 / ジューン・アリソン
彼女自身 / シド・チャリス
彼女自身 / デビー・レイノルズ
彼女自身 / レナ・ホーン
彼自身 / ミッキー・ルーニー
彼女自身 / アン・ミラー
彼自身 / ハワード・キール
日本公開: 1994年
製作国: アメリカ ターナー・エンターテイメント作品
配給: MGM、UIP
あらすじとコメント
今回も異色のミュージカル。というよりも異色作にしなければならなかった大ヒットシリーズ3作目。ネタ切れとネタバラし双方を上手く組み合わせた作品。
アメリカ、ハリウッド映画が黄金期を迎えていた1940年代初頭。多くの国民が最低週に一度は映画館に通っていたころ、ミュージカルと言えばMGM映画の独壇場であった。
そんな黄金期から遡ったり、ピークが過ぎて行くまでの様々な作品が登場してきて・・・
シリーズの踏襲とバックヤード初公開というバランス感覚に富んだ第3作。
ミュージカル映画といえばMGMであり、第1作はその「おいしいとこ取り」で抜群にゴキゲンな作品だった。
そして第2作は、第1作で入りきれなかった名ナンバーに、ミュージカル以外にもドラマだって最高の作品群があったとドラマ部門の懐かしい俳優たちの名演を見せてくれて、お腹一杯にしてくれた。
そして本作である。しかも1作と2作目の間隔は2年間だったのに対し、本作は18年の歳月がかかった。そこに映画業界自体の衰退を感じた。
そもそも前2作が別な毛色で楽しめた傑作であったので、3作目はないと思っていた映画ファンも多かったであろう。
確かに序盤は前2作から漏れたミュージカル・ナンバーの羅列であり、興を削がれた感は否めない。
しかし、それだけで終わるはずがないと思っていると深読みするうるさい映画ファンへのご褒美的な『秘蔵』や『お蔵入り』のナンバーが登場してきて鳥肌が立った。
例えばエレノア・パウエルがタップでひとりで踊るナンバーは、ジグソー・パズルのように舞台装置を小分けにし、大型カメラでワンカットの移動撮影しながら、外したり別な場所で組み合わせたりと計算し尽くされたスタッフたちのバックヤードの動きを撮影したフィルムと実際の映像化されたダンス・シーンと画面を二分割して見せてくれる。
他にも同じ楽曲を別な女優が歌い踊るシーンを交互に見せて実力の違いをイジワルにも見せつけたり、歌唱力抜群の黒人シンガーがどのような差別を受けたとか、本編からはカットされた豪華絢爛な場面やら、主演女優の交代劇、大人の事情で吹替えになった女優のオリジナルの歌声とか、映画ファンが思わず腕組みして考え込んでしまうような社会的メッセージも製作時の時代性を感じさせる。
それでも、多くのファンがいるフレッド・アステアが一切登場しないぞと思っていると終盤で登場して流石のアステアだと感じ入った。
しかも彼がどれほどの努力家であり、完璧を期したかを知れるダンス場面など鳥肌が立ち、完全に脱帽したくなった。
しかし映画が娯楽の主流でありミュージカルといえばMGMであるが、ラストで登場するナンバーには嫌でも時代の流れを痛感させられた。
なるほど、これでMGMと個人芸に徹したキャストやスタッフを有した娯楽大作映画は終わったのだと寂しい心持にさせられた。つまり継続してパート4が製作されることはないと痛感させてくれた。
そこが前2作との違いであろうか。ただ、3作とも、編集の妙に関しては「お見事」と目を見張りざるを得ないシリーズである。