スタッフ
監督:チャールス・ウォルターズ
製作:ソル・C・シーゲル
脚本:ジョン・パトリック
撮影:ポール・ヴォーゲル
音楽:コール・ポーター、S・チャップリン
キャスト
ヘヴン / ビング・クロスビー
トレイシー / グレース・ケリー
コナー / フランク・シナトラ
リズ / セレステ・ホルム
ルイ・アームストロング / 彼自身
ロード / ルイス・カルハーン
マーガレット / マーガロ・ギルモア
キトリッジ / ジョン・ランド
セス / シドニー・ブラックマー
日本公開: 1956年
製作国: アメリカ ソル・C・シーゲル・プロ作品
配給: MGM
あらすじとコメント
前回の「イースター・パレード」(1948)の監督チャールス・ウォルターズ。彼が手掛けた作品でケーリー・グランドとキャサリン・ヘップバーンが共演した「フィラデルフィア物語」(1940)のミュージカル版リメイク。中々洒落た仕上がりで、モナコ王妃になるグレース・ケリーの女優引退作でもある。
アメリカ、ニューポート
久々に自分の邸宅へ戻った作曲家のヘヴン(ビング・クロスビー)。彼はサマーフェスに招聘された有名ジャズマンのグループに屋敷を提供した。すぐに軽快なジャズの練習が始まるが、それを聞いて隣家のトレイシー(グレース・ケリー)が怒鳴り込んできた。
何と彼女とヘヴンは元夫婦である。しかし、若いトレイシーはワガママで生意気なタイプ。本当は未練が残るヘヴンを無視し、暴走しての離婚であった。
そんな彼女、今度は自分の家族さへも蔑ろにし、金持ちと再婚を決めた。しかもその挙式前日のことである。自分への未練たらしい当てつけでイヤミだとヘヴン邸へ怒鳴り込んできたのだ。
他方、名士であるトレイシーの父君の浮気がバレて、掲載中止の引換えとしてワガママ娘の結婚式取材をさせろとゴシップ誌が言ってきた。仕方なく母親が受け入れて、やって来たのがコナー(フランク・シナトラ)とリズ(セレステ・ホルム)の二人で・・・
セレブたちのワガママを蔑んだ視点で描くゴキゲンなミュージカル。
元妻の再婚が気になって戻ってきた作曲家。何か騒動が起きそうな予感だ。
そこに三流ゴシップ誌の記者二人も来て「セレブのただれた真実」的記事を書こうとしている。
そんな連中を暖かく、かつ揶揄しながら歌って進行させるのが有名ジャズマンのルイ・アームストロング。何度も彼自身の役で映画に出演し、毎回主役を喰う演技と演奏を披露してくる御仁。
しかも個人的に一番好きなジャズのクラリネット奏者エドモンド・ホールがバンドメンバーで顔を見せ、演奏の雄姿まで見られるのだから、それだけでゴキゲンな気分になった。
元々はスクリューボール・コメディの傑作「フィラデルフィア物語」(1940)なので、登場人物たちのおかしな言動やら、意外な方向へ転がるストーリィの妙などはオリジナルの力ではある。ゆえに完全なるミュージカル映画とは言い難い作品である。
つまり、踊りの上手いスターが登場せず、どちらかというと歌と楽曲で押してくるし、ヒロインのグレース・ケリーは寝ながら一曲歌う程度、踊りは酔った勢いで揺れる程度で何ともグレースはミュージカルで馬脚を現さないようにした印象。なのでどうしても『ミュージカル調』で、あり、その実「音楽映画」と感じた。
それでも演技も達者なメンツが集合し、ストーリィ進行をシャットダウンしないゴキゲンなジャズ音楽で繋ぎ、セレブとそれを妬む階層の違いを明るく揶揄し、それでいて下品になり過ぎない進行。
セレブだって「成上がり組」と「一応のホンモノ」があり、その差異を明示したり。どうせ歴史の浅いアメリカのこと、それよりも個人の差、つまりは「個性」が際立つということを結論的に印象付ける。
少し嫌味な視点や下劣なパパラッチなどシニカルな眼もクローズアップされるが、トータルとして良く出来たゴキゲンな作品。