映画監督の崔洋一が亡くなった。在日韓国人を父に持つからか、どこか挑戦的というか好戦的で『肉体的痛さ』を感じさせる作品が多かった。
しかも主役たちは「被差別者」とか「下っ端」。そんな奴らの底力というか、闘争心と不屈の精神を描く作品が多かった。結果、「タフさ」と「骨太さ」が押し出され、それでいて下品ではない。
何作かは<番外編>でも扱った。そのほとんどが沖縄を舞台にした作品。要は、好きな監督。肉が切れるとか骨がボキっと折れる音が妙に際立つアクション。体から噴き出る汗のにおいを強烈に感じさせる画面。
だが、かなり波がある監督でもあり、確かに好きな作品ばかりではない。それはキャストなりが、真意を理解し切れず自分の思い込み演技から脱却できなかったからという印象も多い。力量不足でも起用しなければならない環境下でもあったのだろう。
そんな作品群の中でも個人的に大好きなのは日本復帰前の沖縄のロッカーたちを描いた「Aサインデイズ」(1989)。粗っぽい演技陣と荒っぽい作劇がマッチして、沖縄の暑さではない寂寥感を際立たせていた。
今では完全にアウトだろうが、スタッフへの暴力行為も有名な話でそれを武勇伝の如く語ることもあった。本人自身が血気盛んで、それこそが被差別者としての矜持だったのかもしれぬ。
自分の地元でも朝鮮系と韓国系が混在し、右がかった日本の学生との喧嘩は日常的に存在していた。当然、自分の同級生にも在日系がいた。まあ場所柄、存在するのが当たり前とも感じていた。崔監督ではないが、現在では日本語読みではない名を名乗るようになった奴もいる。そ奴は現在医者だったりするから面白いが。
映画界でも在日の人間が多いとも聞くし、開示している者、敢えてスルーしている者と様々だろう。
そんな中で崔監督は被差別者ゆえの熱量を画面にぶつけていた印象もあり、大胆にして剛腕な印象が強い。この手の監督は、今後出てくるのだろうか。
ご冥福をお祈りしたい。