波も涙も暖かい – A HOLE IN THE HEAD(1959年)

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スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
脚本:アーノルド・シュルマン
撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ
音楽:ネルソン・リドル

キャスト
トニー / フランク・シナトラ
マリオ / エドワード・G・ロビンソン
エロイーズ / エレノア・パーカー
シャーロ / キャロリン・ジョーンズ
アルヴィン / エディ・ホッジス
ソフィー / セルマ・リッター
マークス / キーナン・ウィン
フレッド / ダブ・テイラー
ドリーヌ / ジョイ・ランシング

日本公開: 1960年
製作国: アメリカ シンキャップ・プロ作品
配給: ユナイト


あらすじとコメント

今回もフランク・シナトラ主演作。楽天家の男ヤモメと彼を取り巻く人間たちを描く何ともハートフルな人情ドラマ。

アメリカ、マイアミ

繁華街の外れでホテルを営むトニー(フランク・シナトラ)は妻に先立たれて小さな一人息子と住んでいた。ところが見栄っ張りで楽天過ぎる性格から経営は火の車で、家賃を滞納し遂に追い出されようとしていた。その上、若いフーテン娘とも適当に付き合っていて、そのどれをも手放したくないタイプ。

しかし、今回は万策が尽きそうで、遂に犬猿の仲でニュー・ヨークで商売を営む兄マリオ(エドワード・G・ロビンソン)に泣きの電話を入れるが・・・

ダメ男の再生をハートフルに描く好編。

妻に先立たれ、小さな一人息子がいるホテル経営者。楽天的というか、場当り的で何事も真剣に立ち向かおうとしない典型的ダメ男タイプ。

それでもシナトラが演じると何ともチャーミングで色気が漂うから不思議。

成程、古今東西この手のダメ男に入れあげることを愛情と思い込む女性もいたことだろうと納得もできる。

一方で金の工面を頼むのが正反対の性格で倹約家というよりもケチの権化のようなカタブツ兄貴。

演じるのはギャング映画の極悪人役で名をはせたエドワード・G・ロビンソンなのだから愉快でもある。

この兄貴の方は、自分にはダメ息子がいるから、尚更、主人公タイプが許せないのだ。そこで目を付けるのが主人公の一人息子。確かに現状では、不甲斐ない父よりも実直な叔父の方がマシかもしれない。

ところが、息子はそんな父親だから大人びて、逆に暖かい目で父親を見ているから、話はややこしくなる展開。とはいっても、完全に着地点は想像付く。

何故なら監督はアメリカの良心と呼ばれ、傑作、秀作を数多く輩出した名匠フランク・キャプラなのだから。

しかも前作から6年のブランクがあり、往年の力量は鈍っているのでは噂されたが、本作もいかにもキャプラっぽい進行と演出で期待を裏切らない。

つまりラストは完全なる予定調和のハッピーエンドで涙腺が緩むんだろうなと想像させつつ、至極当然にそこに向って進行していく。

主人公を演じるシナトラは、制作当時この手の設定の役柄を多く演じていたので安定感にあふれた「軽さ」で、歌も披露する。

ハートフルな設定と展開を得意とするキャプラ作品では、主人公を窮地に陥れる分かりやすい敵役が登場することが多いが、本作ではエドワード・G・ロビンソンが当てはまるのだろうが、何ともカタブツで実直という印象で決して単純な悪役ではない。

後半でそれらしい役に変貌するキャラも登場してはくる。そのあたりのバランスが若干作品として弱い印象を与える。

それでも性善説が前提で、大上段から訴えかけてくる。根っからの悪人など存在しないと。

確かに斜に構えた視点で見て行くと登場人物たちにかなりの欠点も見えるが、そこは単純に目を瞑れば間違いなく良作である。

それにしてもこの手の決して子供だましではない映画は無くなったよなと、そちらの意味で涙がでてくる。

余談雑談 2022年12月17日
時代に取り残されて久しい。敢えて自らそうしているのだから文句は言えまい。 脚の痛みも完全にとれ、なるべく歩くようにしている。かといって公園や散歩コースを歩くわけでなく、ランチ開拓とか、どこかに行ったついでに少し遠回りする程度。それでも、もつ