残り少くなった。
今年の日数もだが、自分好みの飲食店が、である。本当に今年だけで何店閉まったか。
そんな残り少ない飲み屋の一軒。そこも30年以上通っているが、親父さんも70歳をとうに過ぎ、動きも遅くなっている。たった独りの店だからか、未だに値上げせずで驚く。
ただし、仕事に往年のキレはない。それでも有り難いので、なるべく出向くようにしている。場所は『吉展ちゃん事件』で鬼の八兵衛と呼ばれた刑事が犯人のアリバイ崩しに直結した大火の場所付近である。
昔は自室から徒歩で向かったが、急に距離を感じるようになりバスを使うようになった。それで口開けの17時に着くように逆算してバスに乗る。特段、アリバイ証明用ではないが。
行く度に、やはり決まって同じ時間に来るご常連さんがいらっしゃる。4人掛けのテーブルが2卓。少し反っているカウンターに3席の実に汚い店。本当に汚いので、人に紹介できない。
自分は入口から一番遠いカウンター席。その常連さんはひとつ開けて入口近く。基本はもつ焼きの店だが、その方は韓国のりに酎ハイ二杯で700円で帰る。ごく稀に他の常連も来るが、通常ほぼマスターと二人だけになる。
暫く前になるが、そこに一見の客がきたことがあるネットで調べたのか、場末に見合う服装ではなく、一応静かに店内観察をしていた。こちらが店主と少し話していたら、突然会話に入り込んできた。
そうなると自分もマスターも苦手感がすぐにでる。馴れ馴れしいとか、すぐに自分好みの話題に替えて知識披露とか始まるからだ。承認欲求なのだろうが、一目置いてよ的評論家気取りの人に当たったりすると悲惨。
かく言う自分だって同じ穴の狢だが、その程度の浅い知識で過大評価させようとするのかよと驚いて酒がマズくなるし、身の程を知れと確実に上から目線で対応しようものなら、刃傷沙汰に発展もありうる。そうなりゃ、こちらの責任も発生だしな。
まあ、経験上その手はすぐにわかるし、その時は客同士なので拒絶出来るが、店側は閉口しつつ対応せざるを得ないか。
そもそも客商売であるマスターが一見が苦手というのも珍しいとも思うが、実はそういうところが好きだったりする。
その時は、こちらが大方飲み終わっていたので、会話を謝絶して先に失礼した。昔からマスターが言ってたのは、私は一切ネット情報を見られないので、何がどう書かれているかはわからないが、稀に、知らぬ人が来る、と。決って全員が同じ質問をすると苦笑い。
「いつから営業しているんですか」。確かに、掃除など一部だけしかしていないし、単純に汚い店ではある。マスター曰く、その質問をする人は二度と来ないんですよ。
まあ、店との相性もあるしなと思う。その手のお客さんは苦手なんです、と。やっぱり自分好みだ。
そんなマスターは常連が減り、年取って皆がもつ焼きなど食べなくなったと嘆く。そう聞くと、こちらは意地でも食べようとする。かなり大串で1本100円。他のメニューもマックスで350円だ。しかも「玉子焼き(ニンニクスライス入)」の一品のみ。
だが品数も徐々に減り、妙な枯渇感で食べ過ぎ、時々腹の調子を崩す。それでも今のうちに食べておかないとと寂寥感が勝る。年内にもう一度顔出せるかな。
今年の総括は大晦日の発行時にするが、本年最後の幸運は、きっと今日だな。それは随分と昔から決めている、ここでの紹介映画の順番。偶然の運ではあるがクリスマス・イブに本作を紹介できたことは、妙に嬉しい。何せ、クリスマスに重要な意味がある映画。
こんなベスト・タイミングは発行以来初めて。宝くじでも買えば当たるかとも思ったが、昨日で年末ジャンボは終売でしたっけね。
ま、3000円で夢を買うより、間違いなく300円で酎ハイ10杯飲んだ方が性に合ってるな。それに、そもそも夢は買うもんじゃねェよなと負け惜しみ。