スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
脚本:ハル・キャンター、ハリー・テュージェント
撮影:ロバート・ブロンナー
音楽:ウォルター・シャーフ
キャスト
“二枚目”デーヴ / グレン・フォード
アップル・アニー / ベティ・ディヴィス
エリザベス / ホープ・ラング
ジョイ・ボーイ / ピーター・フォーク
ロメロ伯爵 / アーサー・オコンネル
ブレイク判事 / トーマス・ミッチェル
ハギンス / エドワード・エヴェレット・ホートン
ジュニア / ミッキー・ショーネシー
ルイーズ / アン・マーグレット
日本公開: 1962年
製作国: アメリカ ア・フラントン・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の「波も涙も暖かい」(1959)を監督した名匠フランク・キャプラ。その次に手掛けた作品で監督の遺作にもなった、実にハートウォーミングな秀作。
アメリカ、ニュー・ヨーク
禁酒法下の1930年代初頭、やり手でのし上がってきたギャングの“二枚目”デーヴ(グレン・フォード)。彼は幸運の証として、何か重大案件があるときはリンゴ売りの老婆アップル・アニー(ベティ・ディヴィス)からリンゴを買うのが習慣だった。
それである時は命拾いをしたり、ある時は潰れたナイトクラブの経営者の娘エリザベス(ホープ・ラング)を見いだし、売れっ子の踊り子に育て恋人にもした。これもすべてアップル・アニーのお陰と信じて疑わないお人好しでもある。
そんなアニーは高級ホテル・スィート在住の貴婦人と偽って、幼少のころからスペインの修道院に預けていた一人娘に嘘の手紙を書き続けていた。
ところが、その娘がスペインの伯爵子息と恋に落ち、結婚の許可が欲しいから一族を引き連れクリスマスに訪米してくるという手紙を送ってきて・・・
涙腺崩壊必至のハートフル・コメディの秀作。
ギャングだが、お人好しの主人公。アル中でボロ服しか着ないリンゴ売りの老婆。
その老婆の唯一の慰みは仲間のボーイからホテルの便箋と封筒を貰い、自分がセレブの貴婦人と偽って一人娘と文通をしていること。
それを信じて疑わない愛娘が欧州貴族と結婚を決めたから祝福を受けたいと皆で来るという。何せNYで一番のセレブ未亡人で、知事や市長は皆友人で毎晩パーティー三昧といってるのだから。
現実を知ったら破談間違いなしだ。そこで主人公である親分が一肌脱ごうとするが、そこはギャングだし裏ビジネスのトラブルも発生し、全てが上手く行かなくなる展開。そもそも老婆の精神状態は絶望の底で、リンゴを売ってくれる状況ではないのだし。
元々はキャプラ監督の「一日だけの淑女」(1933)のセルフ・リメイクであり、本作が遺作にもなった。
内容は完全なる大団円になるのはキャプラ作品を見てきた観客なら当然だと信じて疑わないだろう。
それほど「アメリカの良心」を信じ、人間は信じるに値する生き物だし、血も心も通う暖かい存在だと高らかに謳い上げる作品が得意。
想像が付くラストに向い、どのように曲折や悲劇が主人公たちに襲い掛かり、もはや絶体絶命と思わせながら実にリズミカルに進行させる力量は大したものであり、遺作である本作でも遺憾なく発揮されていると感じる。
何と言っても老婆役のベティ・ディヴィスの名演が光るし、ボスの子分でコメディ・リリーフを一手に引き受けるピーター・フォークの存在も抜群。NYの底辺に生きるタフな連中も、実際の障がい者ながら皆が名演。
確かに時代がかっているし、やり過ぎで嘘くさい夢物語と感じる人もいるだろう。時代が進んだ現在ではそちらが主流かもしれぬ。
それでも映画は夢を見させてくれると感じさせる作品の一本である。事実、ジャッキー・チェンもその一人で「奇蹟/ミラクル」(1989)として再リメイクしたのだから。
往年の日本人が大好きな貧乏人情ドラマであり、夢なり、奇跡を信じさせてくれる秀作。