スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
脚本:ロバート・リスキン
撮影:ジョセフ・ウォ─カー
音楽:ディミトリ・ティオムキン
キャスト
コンウェイ / ロナルド・コールマン
ソンドラ / ジェーン・ワイアット
バーナード / トーマス・ミッチェル
チャン / H・B・ワーナー
ジョージ / ジョン・ハワード
ラマ高僧 / サム・ジャフェ
ラヴェット / エドワード・エヴレット・ホートン
マリア / マーゴ
グロリア / イザベル・ジュエル
日本公開: 1937年
製作国: アメリカ コロンビア作品
配給: コロンビア
あらすじとコメント
ヒューマニズム映画の巨匠フランク・キャプラ。彼が戦前に製作したSFファンタジーで、実にスリリングな超特作。
中国、バスクル
中国で内乱が起き、現地の外国人救出のため、イギリスの外交官で時期外務大臣の呼び声も高いコンウェイ(ロナルド・コールマン)は、弟ジョージ(ジョン・ハワード)と救援機の手配をし、次々と救助活動に専従していた。
いよいよ残すは彼らと詐欺師バーナード(トーマス・ミッチェル)、娼婦グロリア(イザベル・ジュエル)、考古学者ラヴェット(エドワード・エヴレット・ホートン)の5人だけになった。
彼らは最後の便で脱出に成功するが、パイロットが入れ替わっていて、何と脱出先である東の上海ではなく、真逆のチベット山脈方面へ飛行していた・・・
混沌とする時代に理想郷の存在を提起するSFファンタジー大作。
著作も多く英国内でも人望の厚い外交官。最終便で脱出するのは訳アリ人物のみ。
まさにグランドホテル形式の人物たちが異国からのスリルとサスペンスに満ちた脱出行という出だし。
搭乗人物はイギリス系ばかりで作劇スタイルもキャプラ調というよりも、往年のイギリス製スリラー映画の迫力。
偽パイロットによりハイジャックされ、結果、雪に囲まれたチベットの秘境に不時着。これぞパニック映画という進行。
しかし不時着後、今度は謎の集団に拉致されるという展開。何ともスリリングでどうなるのかと思うと、突然変調する。
氷に閉ざされた山脈の中に小さな盆地が存在し、そこに理想郷が拡がっているのだ。
今度は完全にSF映画にシフトチェンジ。ところが、そここそが人類の夢の到達点的ユートピアなのだ。
人間の加齢は信じ難いほど遅く、豊かな自然もあり、完全自給自足の生活で、誰もが満ち足りて戦争はおろか喧嘩も起きない世界。
前人未到のチベットの山奥に理想郷があり、殺伐として進行していた20世紀の当時の現代人への警鐘を鳴らすべく書かれたイギリスのジェームス・ヒルトン原作の映画化作品。1973年にミュージカル巨編としてリメイクされた。
本作でのキャプラは、どうにもキャプラらしくないとは感じる。ただ、冒頭のアクション脱出口の迫力は目をみはるものがあるし、理想郷で現代人5人が先住者たちとどのような関りを持ち、感化されたり、逆に感化していくのかという悩める現代人という正調キャプラ節の展開もある。
それでも全体的にはパニック巨編からのSFファンタジーの印象が、人間の業とか性に勝ってしまうのは残念。
損失された部分を復元しオリジナルの132分バージョンでDVD鑑賞が出来るので、本当に超巨編として制作されたと実感もできる。
トータル的には上手くまとまった作品である。英雄礼賛でもあり、それが人の立場によって見方や感じ方が違うのも、諍いなり、争いは無くならないのだろうなとも思わせてくれる。