スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
脚本:フランセス・グッドリッチ、A・ハケット、F・キャプラ
撮影:ジョセフ・ウォーカー、ジョセフ・ビロック
音楽:ディミトリ・ティオムキン
キャスト
ベイリー / ジェームス・スチュワート
メアリー / ドナ・リード
ポッター / ライオネル・バリモア
クラレンス / ヘンリー・トラヴァース
ベイリー叔父 / トーマス・ミッチェル
ベイリーの母親 / ポーラ・ボンディ
バート / ウォード・ボンド
ヴァイオレット / グロリア・グレアム
アーニー / フランク・フェイレン
日本公開: 1954年
製作国: アメリカ リバティ・プロ作品
配給: 日本RKO
あらすじとコメント
名匠フランク・キャプラ。ヒューマニズム溢れるハート・ウォーミングな作品を撮らせたら天下一品である。その作品群の中でもファンタジー性を前面に出した秀作を紹介する。滂沱の涙必至のこれぞ珠玉の名作。
アメリカ、ニュー・ヨーク州
クリスマスの夜、小さな町に住むベイリー(ジェームス・スチュワート)が絶望の淵から命を絶とうか、と悩んでいた。
それを知った大天使が二級天使クラレンス(ヘンリー・トラヴァース)を呼び、彼のこれまでの人生を見せて、救う努力をせよと命じた。
小さな町で生まれ世界を旅する夢を持ちつつ、数々の艱難辛苦が押し寄せ実に波乱万丈な人生の激流にもまれ続けていた青年だった。
これは一筋縄ではいかないと思いながら、下界に降りて行こうとするが・・・
人間賛歌を謳い上げる秀作中の秀作。
幼少時代に真冬の凍てつく池に落ちた弟を救ったが、それにより片方の耳が難聴になる。小学生時代のバイトでは誤配合した薬を敢えて届けなかったことにより薬局店主に叩かれたり、成人し素敵な女性と結婚するが、世界恐慌が勃発し新婚旅行にも行けず、やっと立ち上げた不動産会社も強欲な権力者に徹底的に邪魔をされ一文無しになる。
結果、自分など生まれて来なければ良かったと絶望から自殺を決意するまでを時系列を追って、これでもかと見せつけてくる。
観ている方も主人公が素直で真っ直ぐな青年ゆえに追い詰められるというか、窮地に陥っていくと解りながらの鑑賞。
そのストーリィ・テリングが実に見事。成程、これじゃクリスマスの夜に命を絶ちたくなるよなと追い込まれていく。
そこでキリスト教信者に見事な奇跡を見せるのだ。
ある意味で、「信じる者は救われる」。それを主人公に教えるのが「二級天使」なのだ。通常、天使といえば可愛い赤子の頭上に白いリング、背に羽がある的なことをイメージ。ところが、なのである。
この『二級』と『天使』の意味を知るためだけにでも鑑賞をお勧めする。本作での天使役を演じたヘンリー・トラヴァースがお見事の名演を見せるからだ。
自分の中では映画鑑賞史上最高の「二大チャーミングなおじいちゃん役」の一人。もう一人は「我が道を行く」(1944)の老神父役のバリー・フィッツジェラルド。
他にも、本作の登場人物は実に見事な布陣で、絶妙のアンサンブルで映画を盛り上げていく。
特に悪役を一人で受け持つ強欲で老獪な実力者を演じるライオネル・バリモアは、同じキャプラ監督のこれまた傑作「我が家の楽園」(1938)で、気の良いお人好しで絵に描いたような善人の主人公を演じた俳優。それが真逆の登場で、これも配役の妙である。
絶妙でメリハリの効いた進行と作劇。徐々に、こちらの息を詰まらせてきて、もはや限界という時に、何がどうなるのか。
通常、何てことない「メリー・クリスマス!」という言葉が主人公から発せられると涙で画面が見えなくなるだろう。キャプラの人情ドラマに共通する、素直に観ればこれほど素晴らしくストレートな『善意に満ちた』映画も少ない。
それほど作劇の妙味に溢れ、自分は会社清算後の数年間は毎年クリスマスにこの映画を再見し、泣けるかどうかで自分の感性を再確認したものだ。
殺伐として他人への配慮など逆効果と感じさせる時代にこそ観てもらいたい名作。
人間は素晴らしく信用に値するし、こんな「ご都合主義」なら大歓迎と叫びたくなる名作。
本作を嘘くさいとか嫌いと言う人間とはお近付きになりたくないとさえ思ってしまう、個人的には生涯のベストテンに入る作品。