鍵 – THE KEY(1958年)

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スタッフ
監督:キャロル・リード
製作:カール・フォアマン
脚本:カール・フォアマン
撮影:オズワルド・モリス
音楽:マルコム・アーノルド

キャスト
ロス / ウィリアム・ホールデン
フォード / トレヴァー・ハワード
ステラ / ソフィア・ローレン
ヴァン・ダム / オスカー・ホモルカ
ワドロー / バーナード・リー
ケイン / キーロン・ムーア
女中 / ベアトリス・レーマン
一等航海士 / フライアン・フォーブス
船員 / マイケル・ケイン

日本公開: 1958年
製作国: イギリス ハイロード作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

イタリア出身のソフィア・ローレン。他国の映画にも数多く出演している女優であり、本作もイギリス製作品。それにアメリカのウィリアム・ホールデンも出演しているという、何とも国際色豊かなのだが、実にイギリス映画らしいドラマの佳作。

イギリス、ウェストポート

第二次大戦初頭。火力で勝るドイツ軍が優勢であり、北大西洋ではイギリス側の貨物船が次々と襲撃されていた。

沈没は免れたものの自力航行が出来なくなった船舶は、小さなタグボートで港まで曳航してもらうしかなかった。しかし、タグボートは大した艦砲も積載しておらず襲撃されればひとたまりもない。正に決死隊的救難活動であった。

そこにカナダ軍籍のアメリカ人下士官ロス(ウィリアム・ホールデン)が着任してきた。長年陸に上がっていて、何故、自分が転属されたのかも不明の態であった。そんな彼は旧友でタグボート艦長フォード(トレヴァー・ハワード)と再会し喜び合った。だが、フォードはすぐに出航せねばならず、慣れるために同船しろと言われ乗船した。

思いの外、激しい現場を体験し明日からの任務が厳しいと感じながら帰港し、フォードのアパートに行った。すると、そこにステラ(ソフィア・ローレン)がいて・・・

明日をも分らぬ海の男たちとひとりの女の関係を描く戦争ドラマ。

海の男だが軍艦や潜水艦という類でなく、小さく無防備な船で大型貨物船の救助と曳航するだけの任務。

当然、被害甚大な貨物船の海面下ではUボートが虎視眈々と獲物としてのタグボートを狙っている。

初盤は、そんな男たちの海上でのアクションが繰り広げられる。ただし、メインは「鍵」を巡る人間ドラマ。

要は明日をも分らぬ海の男が、万が一、自分に何かがあれば女を次の男に託すいうことである。そのための部屋の鍵で、当然セクシャルな意味合いも含んでいる。

女性蔑視であろうが、戦時下では女性も生きるためには選択肢は少ない。かといって、金品を受け取る売春婦ではないというところが本作のミソ。

彼女は鍵を託された歴代タグボート船長の恋人になるのだが、深い闇を抱えている模様。そこにも心の奥底に秘匿されたものがあり、厳重に「鍵」がかかっているとも感じさせる。

主人公同様、こちらも旧友と女性の関係を思い計る程度にしか説明されない描かれ方。ところが、主人公が「次の男」となって行く過程で救助活動の激しい日常が描かれるので、彼も行く行くは死んでいくのではないかと心理的サスペンスを盛り上げてくる。

主人公は誰かに鍵を渡すのか。それとも彼女の人となりを知って行き、違う選択肢を選ぶのか。

ミス・リーディング的進行を感じさせつつ、個性的な脇役キャラも散りばめ、嫌な気分に引き摺り込まれていく。

ヴェテランの域に達していたキャロル・リード監督の手慣れた、いかにもイギリス映画らしい緩急の付いた静と動のシーンを振り分け、コメディ要素も挿入し、それらがミステリー・サスペンスとして成立している点は流石と感じさせる。

戦争アクションでもあり、複雑な人間ドラマでもあり、心理サスペンスでもある。

ホールデンやローレンという多国籍スターを起用しながらも、全体的には地味さを感じさせるのだが、ある意味、立派な王道イギリス映画と呼べる渋い佳作。

余談雑談 2023年2月11日
ご隠居気分の日常。編集の下請け仕事もなくなり、社会生活から引退して久しい。更にコロナの影響で外出も激減。 ところが世間は、今やコロナなどどこ吹く風の態で、地元は落ち込むほど大混雑が常態化。こちとら住人は目的ありきの外出なので、狭い路地だろう