スタッフ
監督:ローレンス・ハンティントン
製作:シドニー・ボックス、J・メイソン
脚本:ジョン・P・モナハン、パメラ・ケリーノ
撮影:レジナルド・ワイヤー
音楽:ミューア・マシソン
キャスト
ファレル&ジョイス / ジェームス・メイソン
エマ / ロザムンド・ジョン
キャサリーン / パメラ・ケリーノ
アン / アン・スティーヴンス
ファレル医師 / ブレフニ・オルーク
クレイ / モーランド・グラハム
マーシュ / ジェーン・ヒルトン
コロナ / ヘンリー・オスカー
怪我少女の母親 / ベアトリス・ヴァーリイ
日本公開: 1949年
製作国: イギリス シドニー・ボックス・プロ作品
配給: BCFC、NCC
あらすじとコメント
ジェームス・メイソンのスリラー作で続ける。愛する女性の死に関して疑念を持った医師が辿る運命を描く。
イギリス、ロンドン
とある大学の医学部で犯罪心理学の特別講義があり、学生たちで満員になった。講師はファレル(ジェームス・メイソン)で、殺人でありながら異常者でなく正義感から来る『裁く側の高潔さ』を持つ男の話であった。実在するが、性質上すべて仮名で講義すると。
内容は、凄腕医師ジョイス(ジェームス・メイソン、二役)と、一人娘を持つ既婚女性エマ(ロザムンド・ジョン)のダブル不倫から端を発し、エマが自殺。しかし、肉体関係もなく将来のために別れたと理解しているジョイスは、見栄っ張りで金の亡者であるエマの義妹キャサリーン(パメラ・ケリーノ)が絡んでいると直感。確実な証拠はないが、ケイトの性格上、間違いないはずだと。
そして彼はケイトを殺害することを意思決定した、と・・・
知能と実力がある医師の行動が、事実か妄想かと翻弄してくるスリラー作。
愛する不倫相手の自殺に疑念を抱く医師。彼女の性格上、自殺とは考えられないので、派手好きな義妹を疑い、自分の推理は間違いないはずであり、ならば復讐をと思い立つ。
何せ、主人公が二役を演じるので、講師自身の体験談なのかと想起させていく展開。
もしそうであれば、既に本当に殺人を実行したのか。
本作は講義のファースト・シーンから回想形式になり、二人の馴れ初めから経過を主人公の独白によって説明させて行く進行。
当初はデヴィッド・リーン監督のメロドラマの最高峰「逢びき」(1945)とまったく同じで、医師と普通の主婦の精神的不倫ドラマで進行。
続いて夫人の死亡方法が窓からの転落死は別としても、その死に関して娘やメイドが何やら隠していることがありそうだという、やはりイギリス映画史上の名作「第三の男」(1949)の二重パクリ的展開。
それをケレン味たっぷりに描いていくので、いささか興醒めしてしまった。
だが、逆にそういう設定と展開が作り話なのか、真実なのかと混乱させていく。果たして、医師は本当に精神的不倫相手の死の真相を究明したいのか。
それにより本当に義妹の疑惑を立証し、法の番人に成り代わり成敗しようとするのか。
いかにも当時のイギリス映画が得意としたスリラー映画的進行。ただし、ローレンス・ハンティントン監督の力量不足が露呈し続け、一貫性がない。
設定と展開自体には妙味があるので、別な監督であれば、かなり面白い作品となったに違いない。
元々はアメリカ人が書いた原作をメイソンが気に入り、妻で本作の疑惑の義妹役を演じたパメラ・ケリーノが脚本も手掛け、夫唱婦随で映画化した。
ゆえにメイソンは力演である。自分は優秀であると自惚れる人間が、実はパラノイアなのかもしれないという人間の脆弱性を前提に繰り広げられるスリラー作。