スタッフ
監督:オットー・プレミンジャー
製作:オットー・プレミンジャー
脚本:トーマス・C・ライアン、ホートン・フート
撮影:ミルトン・クラスナー、ロイヤル・グリッグス
音楽:ウーゴ・モンテネグロ
キャスト
ウォーレン / マイケル・ケイン
ジュリー / ジェーン・フォンダ
マクドウェル / ジョン・フィリップ・ロー
ルー / フェイ・ダナウェイ
ヴィヴィアン / ダイアン・キャロル
スコット / ロバート・フックス
ク─ムス保安官 / ジョージ・ケネディ
パーセル判事 / バージェス・メレディス
ヒギンソン / ルーク・アスキュー
日本公開: 1967年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
「9時から5時まで」(1980)の主役ジェーン・フォンダ。彼女が出演した人権問題を真っ向描いた社会派問題作を取り上げる。これぞアメリカの病巣という人種差別をストレートに描いている。
アメリカ、ジョージア
第二次大戦が終わり、小さいながら農地を所有するマクドウェル(ジョン・フィリップ・ロー)が帰還してきた。ところが、妻ルー(フェイ・ダナウェイ)や子供らは突然のことで戸惑ってしまう。どうやら彼なしの生活が常態化していたようだ。
一方、その地域では巨大産業地帯を作ろうと女大地主ジュリー(ジェーン・フォンダ)の夫ウォーレン(マイケル・ケイン)が、地上げに奔走していた。しかし、それにはマクドウェルと隣接する黒人女性が所有する土地を地上げしなければならない。しかし、黒人女性はジュリーの乳母で恩義を感じている彼女は強硬な要求ができないでいた。
その上、復員してきたマクドウェルも首を簡単には縦に振りそうにもなく・・・
白人完全優位主義と価値観を異にする人間たちの対立。
戦後すぐの時代に急成長を成し遂げようする南部の閉鎖的で、いびつな価値観に支配された地域。
黒人は人間ではなく、奴隷からの派生型としてしか認知しない白人たち。黒人というだけで露骨に忌み嫌う判事、表面上は一応のバランスを考えはする保安官。どの道、絶対的支配階級の地上げ屋亭主には従うという、分かりやすい場所。
しかし、白人だって「右へ倣え」を嫌う復員兵もいるし、黒人側にも土地持ちながら余命幾ばくもない母親の命令で土地を手放さそうとしない息子や、NYから帰郷してあまりの無進歩な田舎町を打破しようとするリベラルな黒人女性や教授など、実に入り組んだ登場人物たち。
しかも主役である大地主夫妻の5歳の一人息子は、婿的夫の所為で発育障害を抱えている。帰還兵の男も長らくの不在から、それまでの一家の長としての立ち位置から脱落して面白くない。
兎に角、いびつで厄介な価値観の人間たちばかり。当たり前に白人専用トイレやら黒人入店お断りの店もある。
一応、そのローカル・ルールには従うしかない状況の時代。
しかも土地所有の件で裁判が起きると土地譲渡証など「黒人の人気取りの当時の北軍」による偏向書類だと断じるお偉方もいる。
それらが一体どこに集約してくのか。2時間半近い大作であり、監督は社会派で重苦しいドラマを得意としたオットー・プレミンジャー。
ダイナマイトの派手な爆破シーンもあるが、差別主義者と被差別者の長年に渡る軋轢と時代の変化に重きが置かれ人間のイヤな部分が強調される。
持てる白人がピラミッドの頂点であり、ヘンな意味で共通価値観が白人側に確固として存在する。しかし、どうみても9割は公正な教育を受けて来てない「開拓者スピリッツ」の末裔。酒を飲み、何かというと銃を持ち出す。
一応の光明が差すラストではあるが、重苦しく嫌な南部特有の人間ドラマの印象が勝る。