「納得がいく」と「あきらめがつく」の境。
街歩きをしていて、不意に佇まいが好みの『喫茶店』を発見した。かなり前からあるような雰囲気で『自家焙煎』を謳い、入り口横に年季の入った焙煎機が見えた。昭和ぐらいからありそうな雰囲気で、妙に感性アンテナが発動。
丁度、沖縄に行く前で自室用の珈琲豆が欲しかった。何年か前に「珈琲難民」と称し、様々な自家焙煎豆を探し歩いた。結局、昔から買っていた店に戻ったのだが、そこは500g買うと1割引きするシステム。これは大きいと常に一回で500g購入するのだが、沖縄に一週間滞在となるとその間は飲めず、豆が劣化する。
タイミング悪く沖縄出発直前に豆切れになる計算。まさか、沖縄から戻った羽田から直行で豆を買いに行けぬので、どこかで緊急避難的に100gほど欲しいと悩んでいた矢先だった。できれば数年前の自家焙煎難民の店ではなく新規でと。
即座にセンサーが発動し、一見で入店し注文。しかも「サンドイッチ」も数種あり、「ハーフサイズ」まである。
実は「タマゴサンド」が大好き。エビフライや魚フライも『タルタルソース』で、が好き。まあ、タマゴ好きの「お子ちゃま」味覚。ところが『カフェ』チェーンでは買わないしコンビニ商品も大嫌いだから長年敬遠していた。簡易包装が嫌いだし、どこのを買っても化学薬品の味が気になるので。要は手作り感がないから。
しかもその店は、珈琲数種のブレンドからストレートまで同一料金650円で、サンドイッチはハーフで500円。ここで金額についてセンサー発動。確かにタマゴサンドなどチェーン店やコンビニの倍以上はする。ハーフというのも、どの程度か気にかかるし。
しかし、ブレンドの値段は通常の喫茶店よりも安い。ガラス瓶で並ぶ豆はどれも深め焙煎でウマそうだ。
考えればカフェチェーンにも入らなくなった。値上げの連続だし、あの程度のコーヒーで、よくぞあんな値段が取れると激怒し、しかもエコカップ系の舌触りが大嫌い。こぼさないためだろうが、プラスティック製フタの小さな吸い口で飲む不味さ。
コーヒーで、そこまで目くじら立てるのはマヌケといわれるかもだが、構やしないね。いつの間にか慣らされ、「しょうがない」ばかりの人生にさせようとしてるんじゃないかと勘繰りたくなる大手資本に儲けさせないと心に誓う負け犬が居たってよろしいでしょ、と。
なので500g単位で購入し毎早朝豆を挽いて、ネルドリップで淹れて飲む贅沢が逃げ口上。他には、900mlで90円もしないペットボトルのアイスコーヒーをがぶ飲みする。缶コーヒーより安価で味だってあきらめが付く。自分の味覚ではチェーン店の味と極端には違わないし、ならば安い方で宜しい。
で、あきらめが付くと納得が行くの違いに。結果、タマゴサンドのハーフはその場の手作りで、一人前と平気で出す店も多いだろう程度の量。更に、懐かしやパセリが一片付き、レタスの上に自家製ポテトサラも添えてある。食べてみると、そうだこれだったと懐かしさに震えた。
コーヒーにしても、大学生時代に背伸びして自家焙煎珈琲店巡りをしていたころの深さと味。これが一杯650円か。今でも残る自称『名店』の味より好き。今や、コーヒーの焙煎は苦味と酸味の程良いバランスと称しながら、生焼け的で妙に酸味が強いイメージ。なので今風の焙煎が大嫌い。昭和の原体験が違うからだろう。
その苦味が勝るブレンドで量売りの値段も100g650円と来たもんだ。今どき、山手線の駅近くでは格安といえる。ただ、淹れ方にはこだわりがあるし、それが自分好みに反映するかと逡巡はした。
しかし、実直で間違いない仕事だとはわかる。自室飲みで10杯近くは飲めるとなると、間違いなく「あきらめ」ではなく「納得がいく」味と値段。沖縄から帰京後の自室飲みには最適。
翌朝、いつもの始発便で那覇行きなので明るくなりかけた空を見ながら、初めてのブレンドを飲んだ。ちゃんと行ける味だった。
問題なのは、いつも買う500gの豆よりも単価が安いんだよな。
金額と内容を考えたら絶対に納得なんだよな。かといって今までの店も何ひとつミスはしてないし、度重なる値上げ時も、一々謝罪から入り、状況説明をしてくれた。どうやらそちらでは最古参の常連らしいし。
スイッチ一つで一定の味を抽出する技術は大したものだし、カラメルや生クリーム付きで飲まない自分からしたら比較対象にもなりゃしない。
と考えると、やはり無碍にはできないよな。双方とも納得がいく『喫茶店』。後は自分のヤラシイ性格に委ねるか。