暑さに慣れずバテ気味だ。
困るのが食事。久方振りに昔風な喫茶店でサンドイッチに口と目をやられたが、頻繁に通える場所ではない。
割高なのに配達人の評価までするシステムで部屋まで届けさせるのは絶対に嫌。ならばとコンビニ弁当なりを考えるかもだが、生ゴミや弁当等のプラスティックのケースが、すぐに異臭を放つ時期なので、自室食べはなるべく敬遠している。しかも面倒なことはゴミは分別方式で可燃系は週に2回しかだせないし、資源ごみはまた別の日。
食品の入っていたフードパックは「資源ごみ」。つまり週に一回しか出せない。これが弁当だったら串とか醤油パックは可燃ごみ。水洗いして保管するのも水道代がもったいないし。
そもそも自室には電子レンジがないので、俗に言う『チン』して食べられないのだ。あるのはガスコンロ備え付けのグリルとカセットコンロのみ。鍋に移して焼くとか煮炊きは可能だが、まるでホームレスの生活の如し。
ある程度常識人を自負しているので弁当ゴミを素知らぬ顔で外まで持って行き、物陰に投げ込む性格でもない。
かといって炎天下に徒歩移動はつらい。結果、夏バテ気味。で、何かさっぱり系で策はないかと考え『酢飯』に思い当たった。「寿司」である。確かに酸味は暑さには些か有効だ。
当然のことながら『廻る系』。それすら暫くご無沙汰なのだが。理由を付ければネタもシャリも小振りで、数多く食べさせようとさせるし、ネタも能書きを付けるほど上等じゃねぇとか。
幸か不幸か遥か昔に心底絶句する寿司を食べたことありで、ネタもシャリも小振りだろうが、職人の矜持という相乗効果の最大のオマケが付く。ある意味で総合芸術だと感じさせる、白身から赤身の数貫すべてに違う見事さがあり身心で満足した。
それを知ったが故の苦労か、だからこそ潔くあきらめを付けろよかのどちらなのかと。そもそも、回転系と比べてはいけないのだが。
価値観を変えてくれた寿司職人は破滅型で40代後半で亡くなり、もう20年以上は経つ。自分の金銭的な結果から考えても、今残っていても通えないから、逆にストレスかもしれない。
それにしたって、幸いなのは居住地域は有名観光地なので「廻る系」は各社あるし、どこも戻ったインバウンド客や、地方からのファミリー旅行者で満員。ただし、昨今の大手チェーンは脳みその使い方を知らぬ客の動画拡散から、廻らずにタッチパネルでオーダーになっている。合理的で衛生的ではある。
ところが、ここでも天邪鬼発動。シャリもネタ載せも機械は均一だが、それこそ個性がない。それに何周もレーンを回っているのは干乾びて見えるし、雑菌繁殖は如何にとツッコミを入れる人も多いだろう。それでも上手いヘタは職人によるが、目の前で握ってくれる方が信用が置ける。
などと言ってはみるが、職人がいる小規模チェーンですら、最安値皿しか絶対に食べぬ。枚数暗算がしやすいとかの問題ではない。
何やかやと文句を言ってはみたが、結局、職人が握る小さなチェーン店に行ってみた。当然、廻ってなかった最安値の商品のみを注文したら、ネタが三連続で仕入れがないと。
時期的には旬でありそうだし、酢で〆るから問題なかろうと。じゃ、軍艦巻き用のネタを頼んだら、それすら最近入荷しないんですよねと申し訳なさそうに言ってきた。的確に「無いものねだり」のピンポイント攻撃。まるでイジメてるみたいじゃねェかよ。
潮流の変化とか、世界規模で寿司が売れ筋になり、どこぞの外国資本が総取り的に獲っているとか。
安くセコく寿司を食べようとすること自体が、粋でもなけりゃ鯔背でもないてか。
そうか、鯔背の『イナ』だって魚だったな。まあ、今の時代に意味を知る人なんぞ、どれ程いるのかは謎だけどね。