スタッフ
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
製作:ルシアン・ハバード
原作:ジョン・モンク・サウンダース
脚本:ホープ・ローリング、ルイス・D・ライトン
撮影:ハリー・ペリー
キャスト
パウエル / チャールス・ロジャース
アームストロング / リチャード・アーレン
メリー / クララ・ボウ
シルヴィア / ジョビーナ・ラルストン
ホワイト / ゲーリー・クーパー
シュウィンプフ / エル・ブレンデル
セレスト / アルレット・マーシャル
空軍司令官 / エル・ブレンデル
アームストロングの父 / ヘンリー・B・ウォルトホール
日本公開: 1928年
製作国: アメリカ
パラマウント作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
アメリカの大スターであったゲーリー・クーパー。彼のごく初期の作品で、僅かな登場にもかかわらず抜群の存在感を示したサイレント映画を紹介する。
アメリカ、テキサス
田舎町に住むパウエル(チャールス・バディ・ロジャース)は大空を駆け巡るパイロットになるのが夢。そんな彼に惹かれている隣家に住むメリー(クララ・ボウ)は活発なお転婆娘だ。
しかしパウエルは都会から来た女性にゾッコン。更にややこしいのは都会娘は彼の親友でもある資産家の息子アームストロング(リチャード・アーレン)に好意を寄せていること。
そんな折、アメリカも第一次大戦に参加することになり、二名とも戦闘機パイロットになるべく志願するが・・・
壮大なスケールで描くアカデミー賞第一回目の受賞作。
大空に憧れる青年二人の恋のさや当てやライバル心からボタンの掛け違いが起こり、各々の性格も災いする起伏に富んだ友情ストーリィが骨子。
そんな二人をかき乱すため個性の違うお転婆と都会から来た女性が登場してくる。その都会女性が戦地に赴く意中の男に御守を渡そうとするが、自惚れが強い別な方が勝手に自分用だろうと持ち去ってしまう。
この辺りから男二人に微妙な誤解が生じ、戦場で互いが危機に陥っていく。それでも二人揃って英雄になり、自惚れて新たな誤解が生じたりと益々面倒になる展開。
それを壮大なスケールの戦場場面を交えて超大作として描いていく。
監督は自らも航空兵であったウィリアム・A・ウェルマン。ゆえに白黒サイレントとはいえ、すこぶる見事な空中シーンが描きだされる。
特撮も若干は登場するが、ほぼ俳優が乗機しリアルに空中戦を撮影する。カメラ性能の稚拙さ、フィルム品質や白黒スタンダードという制約がありながら、この迫力は見事である。
地上でも何百という兵士たちの白兵戦が俯瞰撮影で描かれ、更に迫力ある弾着、戦車も登場し本物の迫力で押してくる。
サイレントで140分もある長尺でピアノ伴奏のみが録音されているので、慣れないと居心地が悪いかもしれない。
20世紀初頭に認知され始めた映画も20数年経ち、発声映画や様々な映画技法も登場してきた時期。
本作でも興味深い技法が登場してくる。例えば、カメラが主人公らに近付くため幾つものテーブルの人間を越してくるヒッチコックかと思わせるワンカット、地上に写る機影による衝突場面、かじりかけのチョコレート、熊の御守など、小物が持ち主の先行きを暗示させたりと映像表現にも砕身している。
全体的に情緒的と煽情的な演出スタイルではある。サイレントゆえに主要キャストがオーヴァ─・アクトなのが時代性を感じさせ、映画史上初のセックス・シンボルと呼ばれたクララ・ボウは趣味が別れようが、ほんの数分の登場時間ながら息が止まる存在感を示すのがゲーリー・クーパーと当時の映画の歴史を一作内で感じさせてもくれる。
しかも、クーパーの認知は日本が最初で大騒ぎした結果、それが世界に伝播したとも言われている。
時代がかって鷹揚であるし派手なメイクや演技まで歴史を感じさせるが、それでも特撮ではないスケールを感じさせるのに驚く。
どんなにCGなりの技術が発展しようとも、ホンモノの迫力には脱帽せざるを得ないとも感じさせる。それはキャストやスタッフが、途上のものである映画に対し、どこか命懸けで製作に参加している気概を感じ取れるからでもある。
そういった不便さが勝り、機材や技術が劣る時代にこれだけの表現力で強い印象を与えてくれるとは、まさに歴史的大作と呼べよう。