監督:今井正
製作:望月利雄、内山義重
脚本:鈴木尚之
撮影:岡崎宏三
音楽:佐藤勝
キャスト
工藤上曹 / 地井武男
吉永中尉 / 佐々木勝彦
江波洋一 / 佐山泰三
橋本治 / 粕谷正治
宮本吾市 / 三國連太郎
橋本ぎん / 小川真由美
林弥吉 / 加藤武
栗本昌子 / 奈良岡朋子
江波貞雄 / 内藤武敏
他吉 / 大滝秀治
製作国: 日本
配給: 東宝
あらすじとコメント
太平洋戦争の終戦日。東宝が「8・15シリーズ」と銘打ち制作した作品群があった。本作が最終作で戦争がもたらす狂気と悲劇を描く。描かれるのは現在でいう中学生たち。彼らも立派に『日本国軍人』として散っていった。そんな少年たちにスポットを当てる声高の反戦映画。
神奈川、横須賀
昭和18年6月、第二海兵団に14歳の少年たちが入隊してきた。指導教官は工藤上曹(地井武男)で、鉄拳制裁による絶対服従を強いる鬼教官である。
少年たちは宮城、福島、栃木など東北系が多い分隊に、岩手出身の林拓二(中村まなぶ)と江波洋一(佐伯泰三)がいた。中等学校に通いながらも志願した江波に対し、貧しい上に要領も悪く不器用な林は、常に仲間たちの足を引っ張る存在になって行く。
そんな林はすべてに後れを取り、皆に迷惑ばかりかけるので消沈していき・・・
日本が辿った黒い歴史を描く反戦映画。
戦争末期の昭和20年2月、激戦を極めた「硫黄島」守備隊23,000名がほぼ全滅した。
その中に3,800名の少年兵がいた。その少年たちを入隊から実戦までを正攻法で描いていく。
殆どが寒村出身で貧乏な少年たち。ロクな教育も受けられず、生活に追われるだけの生活。わずかな給金を充てにする家族がいたり、平然と反戦を謳い「アカ」呼ばわりされる父親、預け先の親戚に虐げられ娼婦の姉に喰わせて貰った少年など、様々である。
主役は鬼教官であるが、他の科目の将校たちには暖かな視点で見守る者や、合理的に割り切って感情移入しない教官など、こちらも様々である。
しかし、少年兵の一人が自殺したことにより、鬼教官はそこから離脱し前線への転属願をだす。その場所が硫黄島である。
貧乏で苦労しかしてこなかった少年たち。しかし、純真無垢で戦場に赴くことに一切の不審感や懐疑心はない。
逆に、それこそが恐怖である。しかし、そうやって多くの少年を含む人間たちが死んでいったのが戦争である。しかも、負け戦の。
本作では狂気じみた大人の将官はほぼ登場しない。それでも民間人を含めた大人たちも様々。その誰にも悲劇性が纏わりついている。
当然、悲惨で凄惨な戦場が描かれていく展開。戦争に正論などないと、あからさまに訴えてくる。
「日本のいちばん長い日」(1967)から6本製作されたが、本作がその最終作である。すでに映画産業が衰退しており、オールスター・キャストで超大作と謳われてきたシリーズだけに本作のキャストを見てもその差が明らかである。
それにしても少年たちが何の迷いもなく戦死していく姿は、気持ち良いものではない。二度と戦争をしないという国。確かにこの手の映画を見させられては、嫌な気持ちにもなる。
何故なら兵士は中学生なのだから。ゆえに「特別」な「年少兵」なのだ。大学生たちの学徒出陣でもなく、既に戦場に送りだす若者など存在してなかった証左でもある。リアルに『一億総玉砕』や『総力戦』という言葉が使用されてもいた。
本来であればスポーツで国際大会や五輪を目指したり、人気職種に就いて活躍したいと夢を真剣に語り、進める年代である。そんな少年たちにエールを送るのが、挫折を経験しながら生きてきた大人らの夢だったかもしれない。
しかし、そんな夢なりは国民の誰もが持ったり語ったりしてはいけなかった時代。その過程を得て現在の自由があると、少しは考えてみるべきかもしれない。