スタンレー探検記 – STANLEY AND LIVINGSTONE(1939年)

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スタッフ
監督:ヘンリー・キング
製作:ハル・ロング、サム・ヘルマン
脚本:フィリップ・ダン、ジュリアン・ジョセフソン
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:ルイス・シルヴァース、D・ラクシン

キャスト
スタンレー / スペンサー・トレーシー
イヴ / ナンシー・ケリー
タイス / リチャード・グリーン
スローカム / ウォルター・ブレナン
タイス卿 / チャールス・コバーン
リヴィングストン / セドリック・ハードウィック
ベネット / ヘンリー・ハル
キングスレー / ヘンリー・トラヴァース
グレシャム卿 / マイルス・マンダー

日本公開: 1940年
製作国: アメリカ ダリル・F・ザナック・プロ作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

名優スペンサー・トレーシー主演にして、前回の「北西への道」(1940)でも共演した名脇役ウォルター・ブレナンが登場する実在の探検家を描く冒険巨編。

アメリカ、ニュー・ヨーク

1870年、NYヘラルドの敏腕記者スタンレー(スペンサー・トレーシー)が社主から4年前にアフリカで行方不明になった宣教師にして冒険家のリヴィングストンを探して記事にせよと言われる。

それはライバル紙が確証もなく死亡記事を掲載したので生存を確認し、相手紙の鼻を明かしたいからでもあった。ゆえに資金はほぼ無制限。しかし、アフリカ内陸部は明瞭なる地図も存在しない未開の地であり、暗黒の大陸とも呼ばれていた。安否不明のまま、盟友スローカム(ウォルター・ブレナン)とタンザニアに向うスタンレー。

アフリカに上陸すると英国副領事の元を訪れ、通行証を発給してもらおうと考えた。善は急げとばかりにいきなり自宅の押し掛けると副領事の娘イヴ(ナンシー・ケリー)が出迎えて・・・

実在した冒険家の第1回目のアフリカ上陸を描くドラマ。

肉体派で体当たり記事を書く記者。豪放磊落にして命を懸けるのは当然。だから社主に謎かけられば未開の地にだって赴く。

しかし情報量が圧倒的に少ない。つまりはギャンブル的冒険家の精神を持ち合わせていないと成り立たない時代。そんな男が親友と未開の地の奥深くに入っていく。

主人公は実在の人物であり、探しに行く相手も実在した人物。しかも主人公は記者であり、それこそ『足で稼ぐ』時代に多くの特ダネを輩出してきた百戦錬磨という前提。

映画としてはセオリー通りに生死の確証がないままで上陸し、それ以後も不確かな情報のみが頼りという状況下で突き進んでいく展開。

捜索予定は年単位で途中で文明社会とは一切コンタクトが取れないことを承知の上での決死行が予想される。それでも、現地のイギリス人らを味方に付けたり、恋心を抱いた娘を生きる糧として原住民らを雇い、徒歩で名前しか聞いたことがない内陸部へ進んでいく。

19世紀後半とはいえ白人はどのように写るのか。アフリカでも部族が違うと、それこそ比較対象が出来ない存在で登場してくる。原住民ゆえ縄張りに侵入イコール敵であり殺害排除対象ということもあり得る。

そんな状況下で白人の宣教師は生き延びているのかとミステリアスに進行していく。

ただ歴史的事実であり、主人公であるスタンレーの第1回目のアフリカ横断旅であるので、大方の予想は付くだろう。

しかし、映画は文明社会に戻ってから、まるで魔女狩りのような隔世感を描く展開が待ち受けており、それに驚いた。「文明人は未知なり想像出来ないことには恐怖心を抱き、否定の対象となる」。

今度は主人公が大嘘付き扱いされ、糾弾される展開が待ち受けるしかも俎上に挙げられるのがアメリカではなくイギリスという点も興味深い。つまり、アメリカはまだ旧植民地という優位性からの視点と論点になるからだ。

結局、大冒険紀行的に描かれたことが文明社会ではどのように受け取られるのかという展開を見せ、そこで流石の名優スペンサー・トレーシーだと見せつけてくる。

実在の人物ゆえに夢想家とか、詐欺師と吹聴されても、実体験もせず頭脳明晰が前提のイマジネーションだけですべてを牛耳ろうとする側にこそ問題があると。それは主人公がどのような経験をしてきたかが先に提示されるので、観る側にはとても解りやすいのだが。

白黒スタンダード画面ながら、現地ロケした迫力は充分伝わるし、迫力あるシーンも合成でなく、ワンカット内で収めているのも、どれだけの苦労があったのかと推察できる冒険映画である。

余談雑談 2023年9月16日
様々な移ろい。 朝晩の風や陽の長さ、そして朝焼けのクリア度に季節の移ろいを感じる。暑さ寒さも一応、彼岸までねとか。 どの道、今夏は暑すぎて引き籠り度が増した。その所為で、ここで扱う映画を多く鑑賞できて原稿書きが進みストックが溜まったのは幸い