スタッフ
監督:スタンリー・クレイマー
製作:スタンリー・クレイマー
脚本:ウィリアム・ローズ、タニア・ローズ
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:アーネスト・ゴ−ルド
キャスト
カルペッパー / スペンサー・トレーシー
フィンチ / ミルトン・バール
クランプ / シド・シーザー
ベル / ミッキー・ルーニー
ベンジャミン / バディ・ハケット
パイク / ジョナサン・ウィンタース
マイヤー / フィル・シルヴァース
マーカス夫人 / エセル・マーマン
ホーソン / テリー・トーマス
日本公開: 1963年
製作国: アメリカ ケイシー・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の「ニュールンベルグ裁判」(1961)に続く主演がスペンサー・トレーシーでスタンリー・クレイマーが監督を手掛けた作品。膨大な制作費を掛け、人間の金への執着を描いた喜劇超大作。
アメリカ、カリフォルニア
急カーブが連続する山間部のハイウェイを猛スピードで他車を追い抜きながら疾走していた車が、遂に崖から転落。追い抜かれた4台の車から、放送作家ベル(ミッキー・ルーニー)、海藻会社社長ラッセル(ミルトン・バール)、歯科医クランプ(シド・シーザー)、トラック運転手パイク(ジョナサン・ウィンタース)らが崖下まで救助に下りていった。
だが、運転手は瀕死の重傷で虫の息。駆け寄った男たちに「サンタ・ロジータ公園の大きなWの下に35万ドル埋めてある。それをくれてやる」と言い残して息絶えた。驚く男たちだが、俄かには信じ難い話だ。それぞれが車に戻り同乗の家族たちに話すと、やがて全員が疑心暗鬼になっていく。それはどの車でも起きていることであり、もし本当ならどうしようかと画策が始まる。結局、全車が小さな駐車スペースに止まり、話し合いを始めた。
しかし彼らの行動はヘリコプターから逐一警察に報告されていた。何故なら死亡した男は強盗犯であり、カルペッパー警部(スペンサー・トレーシー)が長年追っていたヤマだったからだ・・・
金に目がくらむ人間たちの欲望を大袈裟に描くコメディ大作。
死にかけの見ず知らずの男から大金が隠してあると告げられる市井の男たち。
婿養子で妻の母親に頭が上がらない中年男。いかにも芸能関係らしい風体のライター・コンビ、長距離運搬のトラック野郎などが一応念のために現地に行ってみて、もし本当なら山分けしようじゃないかという話になる。
ところが各車の女性らも参戦し、分配方法を巡って決裂。当然早い者勝ちになり、車の故障やトラブルに見舞われる連中が次々と新規の部外者を巻き込んでいき他者を出し抜こうとするから、暴走と大トラブルが連鎖して加速していく。
警察側は長年追ってきて、やっと金を発見回収できると喜ぶ主人公の警部。しかも大捜査網を敷くこともなく勝手に金の亡者になった人間たちが発見してくれると多寡を括っている。
日本には馴染みのないTV出演がメインのコメディ俳優から、往年の喜劇スターまで次々とカメオ出演的に登場してきて、興味をそそられる。
本当に大金が隠してあるのか。しかし「大きなW」とは何を意味するのかという推測を誰もがしながら、絶対にあるという大前提で欲に目が眩んだ他者をどんどん巻き込み、結果大人数が追い求める展開と相成っていく。
カーチェイスから複葉機の曲芸飛行と加速度を付けながらスピ─ドアップして笑いの連鎖が起きて行く。ただし、そこがコメディの難しいところで、国民性で笑いのツボが違うのが難点でもある。
例えば台詞のダジャレなども字幕ではうまく変換できないし、日本人ではそこではちっとも笑えないと思う場面も多い。
喜劇であるし、あり得ない展開だから大事故が起きても死人はでないし、そもそも度重なる違反で、とっくに警察は逮捕だろうとツッコミを入れたくなる。
そこを大らかに観られるかどうかで判断は異なるだろう。それに本作もスタンリー・クレイマー監督らしい長尺大作で、しかもシネラマ画面用に製作された。
それでも、やはり冗漫さを感じてしまった。コメディというスタンスながら、金が絡むと人間は全員が金の亡者になるという前提自体が日本人には相容れないかもしれないと思ったから。
とはいえ大雑把ながら嫌いではないと感じた作品。