余談雑談 2023年11月25日

たまさか、欧風っぽく。

ここで扱う予定のフランス映画を鑑賞していた。その中で、田舎住まいの中年男が独りで夕食を摂る場面に出くわした。

妙にそそられた。少し硬くなったフランスパン、白黒ながら妙に旨そうなハムとパテっぽいもの。そして無地の瓶に入った安そうな赤ワイン。それらを顔色を変えずに食べる。

真似をしたくなった。誰に見せるわけでもないが、二度と行けないヨーロッパに思いを馳せて。ワインは安売り屋で3本1000円で売っている。ただ地元の下町では、それなりのハムやパテなど扱う店などない。なので、銀座の某百貨店の地下食品売り場にあったので行くことにした。

高く付くだろうが、それこそたまの贅沢、10時の開店目指して地下鉄に乗る。時間帯か仕事関係と観光客が入りまじり混雑。空席を探しながら身動きの取りづらい車内で悔しそうな顔をする若い女性もいて興味深い。

確かにコロナ前の水準にインバウンド数が戻ったとか、一部の景気は好調とか報道されるが、その割には自分に還元されることは一切なし。だったら自分だって、せめて電車ぐらい優先的に坐りたいよな。

で、銀座に着いたら驚いた。目指す百貨店の営業時間が変更になっていた。11時開店だと。この1時間はマズいぞ。帰路の地下鉄も更に混雑が増すのは必至だし、想定外のカフェで金など使いたくない。

少し銀ブラと洒落込むかと考えるが、やはり内外観光客で既に混雑気味。地元も混雑、出先でも混雑。意気消沈だ。それでも初志貫徹で、折角電車賃をかけて来たし、パテぐらいは買いたい。すぐに近くに百貨店がもう二軒あると思いを新たにする。

取り敢えず、すぐ近くに行ってみるとそこは10時開店だった。地下に下りると化粧品街になっていて驚いた。昭和のイメージだと、どの百貨店も1階は化粧品と婦人服売り場か東京土産的なもの。良い匂いというか、化粧品独特の香りが充満していた記憶が強い。それがインバウンド用か高級ブランドに。で、食品系は地下2階に移動。

だが、そこでは高級食材店のみで、しかも好みではなかったので、また消沈。次は、7丁目にある名称が変更になった百貨店。暫くぶりに銀座尾張町の交差点を渡った。

中央通りの雑踏に閉口し到着。だが、そこは開店が10時半で既に開店待ちの客がいる。恥ずかしいが隅の方で待った。

ところが、イメージは一新され百貨店ではなくなっていて、地階はデザートなどの菓子店のみ。つくづく消沈の午前。

仕方なく、目的の場所が開くのを近くのビルの植え込み縁に座って待つことにする。自分以外にも座る人が多い。そこで、ふと考えた。開店時間もバラバラになり、それこそ独自性で横並びを変更の時代か。個人的には賛成だが、調べもせず以前と同じはずだとやって来て消沈。

しかも周囲の人はスマホに集中し、自分だけ何もせずにただ座っているだけ。一瞬、ホームレスになったかと思った。それにしても想定外のカフェは勿論、自販機の缶飲料とも無縁な性格だと苦笑い。坐った視線の先にはカフェチェーンがあり、楽しそうにお茶している人が多数見えて、妙な寂寥感。尤も、そこに金遣うなら食材を数グラムでも多く買う方を取りたいし、それはそれで正解だ。ほんの十数分植え込みに坐り、思いが巡る。

結局、一時間遅れで目的のものを買い求め帰宅。晴れた空を窓越しに見上げながら、寂しい男じゃないぞと思い込ませて独りでワインとフランスパン、ねっとりとしたパテを楽しんだ。

余計な事を考えなきゃ、贅沢だよな。

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