スタッフ
監督:アナトール・リトヴァク
製作:フランク・マッカーシー、A・リトヴァク
脚本:ピーター・ヴィアテル
撮影:フランク・プラナー
音楽:フランツ・ワックスマン
キャスト
レニック中尉 / リチャード・ベースハート
ミューラー伍長 / オスカー・ウェルナー
デヴリン大佐 / ゲーリー・メリル
ヒルデ / ヒルデガート・ネフ
バース / ハンス・クリスチャン・ブレヒ
フォン・エッカー大佐 / O・E・ハッセ
モニク / ドミニク・ブランシャール
ショルツ / ウイルフリッド・シーファース
グリフィン軍曹 / ジョージ・タイン
日本公開: 1952年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
前回の「追想」(1956)の監督アナトール・リトヴァク。第二次大戦下、祖国を憂いて敵側のスパイになる青年らを描くサスペンス系戦争映画。
フランス、アグノー
第二次大戦も終盤の頃。ドイツ国境近くの米軍前線基地に通信将校としてレニック中尉(リチャード・ベースハート)が向かっていた。途中、隊からはぐれたというドイツ空軍の衛生兵ミューラー伍長(オスカー・ウェルナー)ともう一名を捕虜にした。
配属先を知らぬ中尉はドイツ軍捕虜から米軍への協力者を探し、スパイとして祖国に送り込むという情報部所管の部隊への転属だと知らされる。様々な捕虜を尋問し信用に値する人間を探すが、当然祖国を裏切る行為であり、ばれれば処刑対象であるので一筋縄ではいかない任務。
そんな中で結局、サーカス芸人上がりで人間的に問題はありそうだが、割り切って冷静に行動できそうなバース(ハンス・クリスチャン・ブレヒ)と、真面目なミューラーが選出された。
そしてレニックと二人は別行動でドイツ国内に潜入し情報収集に当たるが・・・
負け戦を確信するドイツ人と米軍将校の決死行を描く。
収容先でナチスに懐疑的で反戦めいたことを言った友人が仲間に殺される現場を目撃し、もはやこの国はダメだと確信する若き衛生兵。そしてタフで前科持ちの男。
そんな二名を信用し一緒に諜報活動に勤しむ米軍将校。
内容としてはアメリカ情報部がいかにスパイ候補を様々な角度から見抜くかといった行動から、第二部としてドイツに出戻った若い衛生兵の単身活動と心情的葛藤がメインへと展開していく。
第一部的なパートは捕虜内部で適正者を探し出し信用の可否を含めて特定していく。潜入後の展開は選ばれた衛生兵が偽名とニセの身分で任務遂行に当たる姿が描かれるが、ナチス党員やら、否が応でも売春婦でしか生きていけない女性、青年の昔の素性を知る看護師、そこから医師である父親の現勤務場所が実は問題を含む場所にあるなどが描かれてサスペンスを盛り上げていく。
終盤、重要な情報を仕入れるものの青年の素性がばれてしまい、一挙に追われる立場となった時、彼はどういう行動にでるのか。
冒頭にこれは人物の本名こそ変更しているが場所や状況は史実に基づいていると提示される。ある意味、祖国を売った人間であるが、アメリカ側からすれば協力者というスタンス。一方で遺族なりは複雑な心情であったであろうと推察できる。
しかも戦時下では当然、捨て駒として扱われる。米独双方に複眼的に捉えられず、単純に敵のみを憎む人間も多数いる。まして戦時下、意にそぐわなかったり、集団催眠的戦意モードでは単純に殺害してしまえば良いという価値観が大勢だろうとも描いてくる。
敵味方入り乱れての激しい戦闘場面はないが、爆撃による爆破シーンなどは何度も登場してきて迫力がある。
ある意味、生き様というか年齢や立場に関係なくブレない男たちと、悲劇性を伴うが健気に生き延びようとする女性たちの姿も描かれる。
結果、筋の通った反戦映画として成立していると評価できよう。