スタッフ
監督:ロバート・クローズ
製作:フレッド・ワイントロープ、ポール・ヘラー
脚本:ロバート・クローズ
撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド
音楽:ギル・メレ
キャスト
カーソン / ユル・ブリンナー
男爵 / マックス・フォン・シドー
メリンダ / ジョアンナ・マイケルズ
キャロット / ウィリアム・スミス
ロバート / ステヴン・マクハティ
キャル / リチャード・ケルトン
サイラス / ダレル・ツワリング
バリー / レイン・ブラッドベリ
リパート / メル・ノヴァック
日本公開: 1976年
製作国: アメリカ ワイントロープ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
ユル・ブリンナー主演作。様々な役どころを演じてきたが今回は彼の肉体派としての要素を前面に押し出した近未来アクションにする。斜陽産業だった映画界を感じるが、それが却って相まっている作品。
アメリカ、ニュー・ヨーク
2012年、石油が枯渇し謎の疫病の蔓延からほとんどの人類が死滅した。この地で残った少数の人類は中心部に幾つかのコミューンを作り質素な生活を余儀なくされていた。
ひとつは男爵(マックス・フォン・シドー)と呼ばれる男が屋上菜園で野菜を育てるなどして平和的に暮らしている。しかし、近隣には暴力集団がおり虎視眈々と彼らを狙っている。
そんな時、屈強なカーソン(ユル・ブリンナー)が現れ、毅然と自分を必要とする人間からのスカウトを待つ態で街角に立った。敵集団が喧嘩を売りに行くが見事に撃退。それを見ていた男爵はコミューンのための用心棒にと交渉に行き・・・
人類の生存欲求と一縷の希望を描く近未来SF映画。
生き残った人類は平和的共同体と原始的弱肉強食集団に分かれているNY中心部。
そこに屈強な一匹狼の殺し屋登場。平和集団のリーダーは統率力があるように見えるが、実は臨月の娘とバイオで食用植物種子を作った亭主を安全な地域のノースカロライナの離島まで退避させようという魂胆がある。
つまり身勝手さが前提で自らの仲間を見棄てるつもりだ。
そこには人類自体が生き延びるには犠牲は付きものという弱肉強食の価値観が横たわる。主人公だって生き延びていくために殺人をまったく躊躇なく行えるタイプ。
要はすべてが殺伐とした前提。だから平和的コミューン内でも窃盗や暴走が起き、先行きに暗雲を立ち込めさせる展開となる。
しかし、そもそも謎の疫病からほとんどの人類が死滅し、逆に何で少数の人類が生き残ったかという要因設定など無視。
更に本能的に殺戮し合う以外に、まるでヒッピー集団に如く達観か諦念からか、相互平和優先の暮らしている人類がいる。その分岐点も謎である。もしかして人類の進化のやり直し的発想なのかもと感じた。
それでも希望の地を目指して廃墟と化した地下鉄トンネルを避難道として進む設定になる。
まるでマンガかゲームの如し設定で、決死の脱出行でのアクションに持っていくための筋運び。
つまり人類ほぼ滅亡の設定よりも戦士としての主人公を描くのが最重要。そこに映画産業の完全衰退化があり、低予算で何も考えずにゲームの実写版で知的レベルのあまりよろしくないタイプを映画館へ運ばせる作品として制作された気もする。
監督のロバート・クローズはブルース・リーの「燃えよドラゴン」(1973)を輩出し、その後もやはりリーのでた「死亡遊戯」(1978)等の空手アクションやB級動物ホラーを得意とした監督。
そう考えると本作も戦士対ゾンビ集団的内容と進行で、筋が一本通っている監督とも受け取れる。
ブルース・リーの映画の台詞じゃないが「考えるな、感じろ」という作品。