黒い瞳 – OCI CIORNIE(1987年)

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スタッフ
監督:ニキータ・ミハルコフ
製作:シルヴィア・D・ベンディコ、カルロ・クッキ
脚本:アレクサンドル・アダバシャン
撮影:フランコ・ディ・ジャコモ
音楽:フランシス・レイ

キャスト
ロマーノ / マルチェロ・マストロヤンニ
アンナ / エレナ・サフォノヴァ
エリサ / シルヴァーナ・マンガーノ
パヴェル / フセヴォロド・ラリオーノフ
ティーナ / マルト・ケラー
エリサの母親 / ピーナ・チェイ
マンリオ / パオロ・バローニ
コンスタンティン / ドミトリィ・ゾロツキン
弁護士 / ロベルト・エリツカ

日本公開: 1988年
製作国: イタリア エクセルシオール・フィルム作品
配給: ベストロン


あらすじとコメント

前回の主演女優シルヴァーナ・マンガーノ。イタリアの女優で生活臭のするイメージが強い。そんな彼女が大金持ちを演じた作品を扱う。身勝手さと愛情が入り混じる悲喜劇。

ギリシャ、地中海上

とある客船に乗っているロシア人パヴェル(フセヴォロド・ラリオーノフ)が食堂にやってきた。しかし、ランチ前でスタッフもおらず、水すら飲めない状況で消沈してしまう。

すると奥のテーブルに独りで坐っていたロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)が声を掛けた。「聞き覚えのある訛りだ。失礼だがどちらから」と。パヴェルはロシアと答えると嬉しそうに、今飲んでいるので良ければ一緒に飲まないかと誘った。

渡りに船とばかりに同席すると・・・

いかにもイタリア男の身勝手さが滲むドラマ。

場末食堂の貧乏な末っ子だが無理して行かせてもらった大学でイタリア有数の銀行家の一人娘と知り合い結婚。

何不自由なく人生を過ごしたが、逆に退屈になり温泉療養と称し別居を決め込んだ保養地で仔犬を連れたロシアの若い貴婦人と知り合って、という身の上話を始める主人公。

話を聞かされるのはしがないロシア人中年男。新婚旅行の最中で、しかも自分は初婚。冴えない人生に一筋の光明が差したが、妻は再婚で愛情が薄いと苦笑いする。

毛色の違う中年男二人の静かな船内食堂での描写がメイン。後は、主人公がどのような人生を辿ってきたかを追っていく展開。

原作はチェーホフの短編数本から。マストロヤンニがロシア美女と恋に落ちるというとヴィットリオ・デ・シーカの有名作「ひまわり」(1970)を連想する人もいようか。

確かにロシアに一大ロケーションを敢行し、イタリア人とロシア人の差異を描いたりするのも似ているが、本作の監督でロシア人のニキータ・ミハルコフも当然それを意識し、逆にこれぞ我が作家性とばかりに違う観点から作劇している。

先ずはイタリアの城のような大邸宅での生活模様が描かれ、豪華絢爛な調度品の中で有象無象が決して魑魅魍魎にもなれずに退廃的な価値観と身勝手さが当たり前で生きている空虚さを描く。

本来であればこの手の描写はイタリアの名匠ルキノ・ヴィスコンティが得意としたが、そこも敢えて違う角度から描いている。

そんな生活に嫌気が差した主人公が温泉療養地で恋に落ち、突如消えたロシア美人への思慕の情を絶てず言い訳を作りロシアの田舎町まで探しに行く。

思い込みで愛に生きるイタリア男としてのマストロヤンニは絶妙で流石の演技なのだが、監督が使い切れていない印象が勝る。

様々なタイプの絵画を連想させる画面構成でのアプローチは理解できるが全体的に成功しているとは言い難い。

イタリア男の未練と感情最優先で苦手なことからは平気で逃げるが、ふとした拍子に愛に飢える。それが他人にどのような感情を押し付けることになるのか。

無責任男の身勝手な自滅ストーリィとも受け取れるし、決して幸福なる死は訪れないであろうと連想させる。

マストヤンニだから鑑賞できるとも思うドラマ。

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