あんなに愛しあったのに – C’ERAVAMO TANTO AMATI(1974年)

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スタッフ
監督:エットーレ・スコラ
製作:ピオ・アンジェレッティ、アドリアーノ・デ・ミケッリ
脚本:アルジェ・スカルペッリ、エットーレ・スコラ
撮影:クラウディオ・チリオ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ

キャスト
アントニオ / ニーノ・マンフレディ
ペレーゴ / ヴィットリオ・ガスマン
ルチアーナ / ステファニア・サンドレッリ
パルンボ / ステファノ・サッタ・フローレス
エリーデ / ジョヴァンンナ・ラッリ
カテナッチ / アルド・ファブリッツィ
ガブリエッラ / マルチェッラ・ミケランジェリ
エレーナ / イサ・バルツィッツァ
ローサ / リヴィア・チェリーニ

日本公開: 1990年
製作国: イタリア ディーン・フィルム、ラ・デルタ作品
配給: シネセゾン


あらすじとコメント

イタリアのエットーレ・スコラ監督と俳優のヴィットリオ・ガスマンによるコンビの一作。4人の男女の30年に渡るドラマを描く作品。

イタリア、ローマ

第二次大戦下ではパルチザンとしてドイツ軍と戦い生死を共にしたペレーゴ(ヴィットリオ・ガスマン)、パルンボ(ステファノ・サッタ・フローレス)、アントニオ(ニーノ・マンフレディ)。

戦後、三人はそれぞれ別な道を歩んだ。ペレーゴは弁護士を目指して勉強に勤しみ、パルンボは田舎で高校教師になり家族を持った。

残るアントニオは病院の看護助手となり、女優を目指すルチアーナ(ステファニア・サンドレッリ)と知り合い恋に落ちる。ところが万事陽気で機転の利くペレーゴを紹介すると何と彼女の方が一瞬にして恋に落ちてしまった。面白くないアントニオはペレーゴに殴り掛かり、一気に友情と恋を失ってしまう。

当のペレーゴとルチアーナは順調に愛を育んでいった。やがて弁護士となった彼は大金持ちの顧客を紹介されるが、あまりの傍若無人さに依頼を断ってしまう。ところが、断った相手の娘で美しいが世間知らずのエリーデ(ジョヴァンナ・ラッリ)に見染められてしまい・・・

男らの三者三様の30年に渡るドラマを描く大河ドラマ。

戦時下の抵抗活動で繋がる三人の男。戦後はそれぞれが故郷に帰るなりしてバラバラになる。

ひとりは女性患者と交際を始めるが、紹介した戦友に奪われてしまい消沈。その戦友は立身出世を夢見て金持ちに取り入り恋人を捨て金満娘と結婚。

もう一人はヴィットリオ・デ・シーカの秀作「自転車泥棒」(1948)に感化されて左翼思想に傾倒し、家族や教職すべてを失っていく。

そういった三人を支持政党、個人主義者や利己主義者、志向性による出世と挫折など戦後イタリア人の凝縮タイプとして描いていく。

その中で影響を与える二人の女性を登場させ、それこそイタリア男の誰もがどちらかの女性には興味を持つとか、翻弄されていくだろうなと印象付けてくる。

演出術としても実に興味深く、回想シーンは白黒で描くので半分以上がモノクロ映像。ある意味で、現実よりも過去の思い出が大事なのだと思い込むことこそが後の人生すべてを戸惑わせるのだとも提示してくる。それをイメージさせるのに、本来であれば『美しい思い出』として極彩色なのだろうが、敢えて逆説的に半分以上がモノクロ構成。

その他にも女優を夢見る女性がデートで舞台を見に行く場面では、舞台演出が独りだけにスポットライトが当たり、周囲はフリーズして動かない中で本音を語るという非常に映画を意識した表現で笑ってしまった。

しかし、それを女性が鑑賞後に町なかで同じようにフリーズして本音を言い合おうと提案するから口説きたい男は困惑する。彼女にとって大事なのは脚本というか『流れ』であり、どこか「駆け引き」拒否とも取れるから。この辺りも女性と男性は単純にパズルのようにははまらないという比喩だろう。

またイタリア映画の歴史や影響の受け方の提示手法も、実に興味深い。左翼思想に傾倒する男は「自転車泥棒」こそが搾取される側の苦悩を描き、是正しようと声高に言ったり、やがて映画狂になりTVのトリビア番組に出て、またそこからトラブルを起こしていく。

他には何とホンモノのフェデリコ・フェリーニとマルチェロ・マストロヤンニが登場し、ローマのトレヴィの泉で「甘い生活」(1959)の撮影シーンを再現していて驚いた。しかも、その時に高額映画投資家の老人が登場するとフェリーニと握手しながら「大ファンで全作見てます、ロッセリーニ監督」と笑顔で言われ困惑の表情を浮かべるというなんとも「楽屋オチ」でくすぐってくる。

また、デ・シーカ監督作品の実映像を使い、映画狂の元教師がTV番組で間違いとして描かれたトリヴィアが事実だったと後の鑑賞で再確認させ誇りを取り戻させる場面なども映画ファンとしては何とも嬉しい。実は映画ファン以上だと過信する自分にはツボで涙を禁じ得なかった場面でもある。

エットーレ・スコラ監督は、家族愛や友情を大河ドラマ的に描くのを得意としているし、ある時は室内劇、別な作品ではロケを多用したりと器用なイメージで、事実佳作以上の出来も多い監督と認知している。

そんな監督として本作は映画愛に溢れ、その上、遊び心に満ちた作品で出演陣も適材適所で、30年のそれぞれの人生をメイクや所作で演じ分けているのも大らかさと繊細さ入り混じり高ポイントという印象。

敗戦後のイタリアがもたらした影響と時代の流れを上手く取り入れた大河ドラマとして成功していると断言できよう。

余談雑談 2024年7月27日
声優の訃報。 今回は小原乃梨子、享年88歳。確かに年代的には多く聞くニュースになるし、自分の若い時代から聞き及んでいた声なら当然だ。というよりも、まだ存命だったのかとも驚くのは、最近表舞台での活動が減っていた、もしくは引退状態だったからか。