愛と哀しみのボレロ – LES UNS ET LES AUTRES BOLERO(1981年)

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スタッフ
監督:クロード・ルルーシェ
製作:クロード・ルルーシェ
脚本:クロード・ルルーシェ
撮影:ジャン・ボフェティ
音楽:ミッシェル・ルグラン、フランシス・レイ

キャスト
グレン / ジェームス・カーン
メイヤー&プラ / ロベール・オッセン
アンヌ / ニコール・ガルシア
スーザン&サラ / ジュラルディン・チャップリン
クレーマー / ダニエル・オリブリフスキー
イトビッチ / ジョルジュ・ドン
エブリーヌ&エディット / エブリーヌ・ブイックス
マクダ / マーシャ・メリル
パトリック / マニュエル・ジュラン

日本公開: 1981年
製作国: フランス ル・フィルム13作品
配給: ヘラルド

あらすじとコメント

前回の「ル・バル」(1984)はパリのダンスホールを舞台にして歴史の流れを描いた異色作であった。今回も踊りと音楽がメインとなり、やはり戦前から現在までを描く壮大なる叙事詩。

ロシア、モスクワ

1936年、ラベル作曲の「ボレロ」バレエ公演のプリマドンナ選考オーディがあり、次点の少女はやがて舞台監督と結婚し男児を授かる。

翌37年のパリではヴァオリニストのアンヌ(ニコール・ガルシア)がユダヤ人ピアニストのシモン(ロベール・オッセン)と恋に落ち結婚し男児を儲けた。

38年のドイツでは若くしてヒトラーから認められた青年がピアニストとして頭角を現し、遠いアメリカでは人気絶頂のバンド・リーダーであるグレン(ジェームス・カーン)は専属歌手で妻のスーザン(ジュラルディン・チャップリン)との間に二児を儲けて幸せであった。

そんな折、第二次大戦が勃発して・・・

戦前から現代までを親子三世代に渡って描く壮大なる大河ドラマ。

ロシア、フランス、ドイツ、アメリカの家族たちが各時代に沿った運命を音楽と踊りを前面に押しだして描く3時間にも及ぶクロード・ルルーシェ監督渾身の大作。

それぞれにモデルがおり、ロシアのバレエ・ダンサーはルドルフ・ヌレエフ。ドイツの大指揮者カラヤン、フランスの国民的歌手エディット・ピアフ、そしてアメリカの大人気スィング楽団のグレン・ミラー。しかも親子二世代を同じ役者が演じて行く。

ゆえにある程度は混乱せずに鑑賞して行けるし、戦争がどれほど各国の市井の人間たちを翻弄し、殺していったかを短いながらも印象的に描いていく。

まったく問題のない人生はあり得ないとばかりに絶頂でスタートし絶望に落ちる者、不幸から這い上がり成功していく者、何不自由ない身分に生まれながら得も言われぬストレスから依存症に陥って行く者。

すべて時代の悪影響であり、誰にも感情移入が可能ではある。ただし、あまりにも壮大過ぎて、というか詰め込み過ぎて食傷気味、もしくは消化不良に陥る観客もあろうか。

本来ならTVドラマのミニ・シリーズで描かれる類の内容だとも感じた。もし、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッド・ファーザー」シリーズ3作品を3時間の一本にまとめたら、困惑と混同に陥るようなものでもある。

要は、あれも見どころこれも悲劇とばかりに綴られ混乱していくし、確かに音楽もクラシック、シャンソン、ジャズで踊りはクラシック・バレエからモダン・バレエまでと時代性を明確にし混乱させないような作劇法は用いられている。

とはいってもエピソード自体に強弱があるし、交わらないはずの人間が子孫となってすれ違うという『くすぐり』も入れてくるが、やはり編集のリズム感なり監督の思い込みがいささか暴走気味とも受け取れる。

作品の主軸は、自由とは何かを個人それぞれが真摯に考えるべきであり、おろそかにすると世界をも巻き込む戦争になったり、やたら暴力的に相手なり、友人にすら危害を加えて行くことになる恐怖だろう。

ただし、どのエピソードもどこか見たことがあるものばかりの印象も強いし、確かに各々にモデルがいるので突拍子もない設定と展開にはできなかったのだろう。

兎に角、常に悲劇性が伴う壮大なる叙事詩である。

余談雑談 2024年8月10日
経済に疎い自分。 何でも株価や円相場の変動が慌ただしいとか。一気に資産が目減りしたとか、このままじゃ破産するとか対岸の火事ながら大変そうだ。 自分のような一市民に悪影響が出るやもしれんと脅すニュースもあるが本当か。良い方悪い方両立の報道から