余談雑談+ 2024年8月12日

今回の都々逸。

「主を待乳を山ほととぎす ないて私は今戸橋」

今回は少々難しい都々逸かも。これは現東京の地名が二つ入ったもので「待乳山」と「今戸」という浅草の北側にある場所が使用されている。

現在の東武線浅草駅は旧松屋デパートにあるが、そこから隅田川と並行する通りを北上し、徒歩で10分とかからない場所にあるのが「待乳山聖天(まつちやましょうでん)」。

そのすぐ北側で、今は遊歩道になっているところが、以前は「山谷堀」と呼ばれた水路で、そこに架かっていたのが「今戸橋」。聖天様の右側道を歩くと今でも『いまどばし』と掛かれた橋名板が残っている。

昔は大川と呼ばれた隅田川から『猪牙舟(ちょきぶね)』と呼ばれる小さな船で山谷堀水路に入っていくとすぐに「吉原」に着くのでありんす。

それを前提にして解説しないと意味不明でしょうね。亭主か恋人が吉原に行っちゃってるんでしょう。帰りを待っている自分は吉原には行けずに今戸の橋あたりで待つしかない。

そして「山ほととぎす」はユリ科の多年草ですが、他に山にいる鳥のホトトギスでもある。このホトトギスというのは鳥のくせに夜に鳴いたり、自前の巣を持たず鶯などの巣に托卵するのだそうだ。中々、面倒な鳥かもしれない。

しかも季語としては夏に使うもの。となるとこの都々逸は奥が深いというか、何とも怖い相手とも受け取れる。暑い晩にもじっと待っている女性。ある意味、怪談話的で涼を感じさせる類。

他情報として地名の入るものは「地口(じぐち)」と言われ、今でいうダジャレの意である。「びっくり下谷の広徳寺」「いやじゃ有馬の水天宮」てなもん。

今やダジャレは『おやじギャグ』と忌み嫌われてますがね。でも、昔は学校に行けなかった丁稚さんや小僧さんがそれで地名なり寺名を覚えられたんですがね。

まあ、今でも待乳山聖天とその先の今戸神社は若い女性たちが参拝する名所でもありますがね。ええ、縁結び祈願で。おやじギャグと蔑んでみても、神頼みは昔と変わらないのかと微笑んでしまいます。

そいつァ「恐れ入谷の鬼子母神」だねって。

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