グレン・ミラー物語 – THE GLENN MILLER STORY(1954年)

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スタッフ
監督:アンソニー・マン
製作:アーロン・ローゼンバーグ
脚本:ヴァレンタイン・ディヴィス、オスカー・プロドニー
撮影:ウィリアム・ダニエルズ
音楽:ヘンリー・マンシーニ

キャスト
ミラー / ジェームス・スチュワート
ヘレン / ジューン・アリソン
マクレガー / ハリー・モーガン
ヘインズ / チャールズ・ドレイク
シュリプマン / ジョージ・トピアス
アーノルド将軍 / バートン・マクレーン
クランツ / シグ・ルーマン
彼自身 / ルイ・アームストロング
彼自身 / ベン・ポラック

日本公開: 1954年
製作国: アメリカ ユニバーサル作品
配給: ユニバーサル

あらすじとコメント

戦場に赴く慰問楽団。兵士たちには堪らない娯楽であり、現実逃避で故郷に思いを馳せる存在。今回は実在した有名バンド・マスターの話にする。家族愛に満ちたドラマとして制作された佳作。

アメリカ、ロサンジェルス

売れないトロンボーン吹きのミラー(ジェームス・スチュワート)は仲間のマクレガー(ハリー・モーガン)と楽器を質に入れては仕事が入ると受けだすの繰り返し。夢は定期雇用だが、そんなに甘くないのが世の常。

それでも何とか有名楽団に雇われ地方巡業が決まる。すると移動先に好意を寄せるヘレン(ジューン・アリソン)が住むデンヴァーに寄ると知り、嬉しくて電話を入れる。ところがヘレンは妙にそっけない返答。それもそのはず、何と2年振りの連絡だったからだ。

それでもめげないミラーは一日しか滞在しないので仕事が終わったら家まで行くと一方的に電話を切った。それでも嬉しさを漂わすヘレン。

しかし、当日、夜中になっても彼は現れず・・・

実在した有名ジャズマンの人生を描く音楽映画。

自分の夢は「誰も聞いたことがないハーモニー」を創りだすこと。しかし、ずっとトンネルの中にいて見いだせないというか、抜けだせない。

しかも勝手に恋人と決め込んでいるヒロインの気持ちなど考えずに、自分の気持ちだけで押し進んでいくタイプ。よく言えばヴァイタリティがあり、悪く言えば非常識の塊。しかし、それがアーティストとしては最終的に昇華するタイプなのだろう。

然るしてヒロインは母性が強く縁の下の力持ちとして主人公をサポートしていく。

なのでメインは家族愛の映画である。そこに有名な楽曲が乗せられて進行していく。

アメリカの第二の国歌と称されこともある「ムーンライト・セレナーデ」を筆頭に、昔の人間なら誰でも一度は聞いたことのあるスウィング・ジャズの楽曲が数多く登場してくる。

しかも、曲目にそれぞれのドラマがあったり、葛藤や苦悩が乗っかってくるので成程と膝を打った。ミラーが求めた「独自性のあるハーモニー」は甘美で、それこそセンチメンタルな風情が漂い、体が揺れだす。

ある意味でサクセス・ストーリーでもあり、実在の人物なのでかなり脚色も加えられているのも事実。それでも主人公を演じるジェームス・スチュワートはアメリカの善人代表格であり、実際に大統領選に出馬したら間違いなく当選したであろうとも言われていた。そして妻役のジューン・アリソンもいかにも良妻賢母型の女優である。強き良きアメリカの夫婦像の典型。

しかも、第二次世界大戦へ兵士としてではなく、慰問活動の音楽楽団として心の安寧や郷愁を誘うサポートとして参戦する態を取っているので、戦場自体での直接的な悲惨さは登場してこない。

それでも終盤はどうにも戦争の影が付き纏いイヤな変調を見せる。そして実際のミラー自身がそうであったように、戦意発揚というか肯定する意味ではない悲劇性を伴うので単純明快なサクセス物語でもない。

つまり大団円的なハッピー・エンドではない。それを知った上で鑑賞すると彼のアレンジした甘美系で粋な音楽は妙にセンチメンタリズムを強調させる。

作品的にはバランスが取れておりアーティスト系はやはり凡人や常人とは違うと教えてくれるドラマ。

余談雑談 2024年8月24日
残暑見舞い。 その表現を使用できるのは今年だと8月8日あたりから今月末までらしい。ところが三ヶ月予報では10月一杯は例年を上回る気温で、東日本では11月に入ってから緩やかに秋を感じるらしい。間違いなく以前からの「季語」的な言葉は通用しなくな