アラン – MAN OF ARAN(1934年)

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スタッフ
監督:ロバート・フラハティ
製作:マイケル・バルコン
脚本:ジョン・コールドマン
撮影:ロバート・フラハティ
音楽:ジョン・グリーンウッド

キャスト
虎 / コールマン・キング
妻 / マギー・ディレーン
息子 / マイケル・ディレーン
鮫狩り / パット・マリン
鮫狩り / パッチェン・ファハティ
鮫狩り / パッチ・“レッド・ルアード”・ルアド
鮫狩り / トミー・オルーク
カヌーマン / ステーヴン・ディレイン
カヌーマン / パット・マクドノー

日本公開: 1935年
製作国: イギリス ゲインズボロー・ピクチャーズ作品
配給: 東和


あらすじとコメント

「真夏の夜のジャズ」(1959)はジャズ・フェスティヴァルを記録したドキュメンタリーであった。今回もドキュメンタリー映画で継げるが、その基礎を確立した作家による自然と人間を描く極北の秀作。

アイルランド、アラン島

西部のゴールウェイ湾には幾つもの島々があり、そのひとつ。切り立った断崖絶壁を持つ石灰岩で形成された場所があり、南西の強風が吹きつける非常に過酷な環境の場所でもある。

そこに住む虎とあだ名される男(コールマン・キング)と妻(マギー・ディレーン)、そして長男(マイケル・ディレーン)は、日々大自然の猛威に晒されながら懸命に生きていた。

男は仲間らと小さな船で漁をするため一日中、海にでている。妻は主食であるジャガイモを成育させるために岩を細かく砕いた上に海藻を敷き詰め、更に岩の間にわずかばかり存在する砂を見つけだし種をまく。息子は絶壁の上から釣りをして魚を釣る。

そんなある日、息子は崖の上から大型種であるウバザメを発見し・・・

まさに極北で生きる人々の過酷な日常を追う秀作。

常に強風に晒され、肥沃な土地もない場所。そんな過酷な場所で生きていくのは常に死と隣り合わせでもある。

本作で描かれるのはそれを当然のこととして受け入れ生きていく人間たちの強さである。

主に描かれるのはとある家族だが全員が職業俳優ではなく実際の島民であるので会話等による状況説明は殆どなく、彼らにとっては日常行動が撮影されているだけ。だからこそ人間の生存欲求がすべてに勝り、「恐怖感」とか「死の危険」などお構いなしに生きていく姿は心底素晴らしいと感じ入った。

監督は本作のために18ヶ月も島に滞在し、彼らの姿を追った。製作されたのが1934年であることから、かなり大きく不便な機材のみでの撮影である。そこから察するに相当過酷な状況下での撮影を余儀なくされたであろうと画面越しに伝わってくる。

そういった様々な要素を鑑みて、現代の人間とは全く違う『生命力』に満ち溢れ、いとも簡単に子供が崖を上り下りしたり、冒頭で挟まれながら悪戦苦闘して蟹を捕えるのは遊ぶためでなく釣りの餌のため。

しかも蟹を付けた糸を断崖から垂らすのに、命綱もなしで片足を投げ出す。その場面など観ているこちらに冷や汗が浮かぶ。

1トンを超えるサメを捕獲するのも5人がやっと乗れる小舟で武器は「銛」のみ。まさに双方が死闘を繰り拡げ、やっと捕えると縄で曳航し島民総出で引き上げる。そして肝臓は煮詰めて灯油にし、肉は当然食用。

すべて自然の恵みを有効活用する。娯楽や情報もなく、恐らくは文盲が殆どではないかと推察させるが、それでも大自然と対峙するのではなく、所詮真っ向勝負すれば負けることを承知の上で折り合いをつけていく。

ラストもいかにも極北で決して明るい未来ではないとイメージさせる。

長期撮影をしただけに丁寧なカット割りと硬軟取り混ぜた編集も素晴らしく、成程これがある意味ドキュメンタリー映画を確立させたロバート・フラハティ独特のタッチだと感じる。

80分にも満たない小品だが、非常に印象深い秀作である。

余談雑談 2024年9月21日
値上げですか。 何でもかんでもで嫌にもなるが、今回気なったのは送料関係。 ネット・オークションで落札するのはポスターとかパンフレットのみなので通常、送付に関しては郵便局系ばかり。それが10月から値上げ。更に気にしてなかったが宅急便送料もだと