スタッフ
監督:フェルッキオ・カステルヌオーヴォ
製作:エリザベッタ・C・ディ・フォリーノ
撮影:パオロ・ドッターヴィ
編集:ニコラ・ペッツィオ
音楽:ルイス・バカロフ
キャスト
彼自身 / フェデリコ・フェリーニ
彼自身 / マルチェロ・マストロヤンニ
彼女自身 / ジュリエッタ・マッシーナ
彼女自身 / アンナ・プルクナル
彼女自身 / ロザリア・タフリ
彼女自身 / ドナテッラ・ダミアーニ
彼自身 / ダニー・ケイ
日本公開: 1982年
製作国:イタリア オペラ・フィルム作品
配給: フランス映画社
あらすじとコメント
今回もドキュメンタリー映画にする。イタリアの名匠フェデリコ・フェリーニの新作撮影に付き添いつつ各方面から彼の姿に迫っていく。
イタリア、ローマ
チネチッタ撮影所でフェリーニの新作「女の都」(1980)の撮影が行われていた。主演は監督の「8 1/2」(1963)以来の起用であるマルチェロ・マストロヤンニ。
どうやら内容は女性の台頭を描くものらしいが、すべては監督の頭の中である。スタジオ内に巨大な「すべり台」を作り、列車の外の流れゆく景色、広大な海のうねりさえもブルーシート等を大掛かりな回転焼き機のようなものを動かすことによって再現したりしており、いかにものフェリーニ作品になりそうだが・・・
ファンタジー性の強そうな作品を制作する監督の背景を描くドキュメンタリー。
ストレートな物語よりも心と頭の中の『おもちゃ箱』を具象化するイメージが強い監督。
一貫しているのは徹底した人間好き、特に女性。しかも女性も誰もが振り向くような絶世のスタイル抜群の美人ではなく、かなり「恰幅の良い」タイプ。
それらは監督の幼少期に観た「サーカス」がすべての原体験だと監督自身が語っている。確かに現代では斜陽系だが、動物が芸をしたり、ピエロたちがおどけた演技を披露したり、息を飲む命懸けの演目が眼前で繰り広げられる見世物。
間違いなく過去作品からも読み取れるようにフェリーニ監督の作品にはそれらの影響が色濃くでているものが多い。
恐らくは新作もその系譜であろうと推察させる巨大セットや表現スタイル。本作の監督は撮影カメラマンのフェルッキオ・カステルヌオーヴォ。様々な場所にカメラを向け撮影現場のバックヤードを追っていく。
その中で主演のマストロヤンニや、長く監督と組んで仕事をしてきたスタッフ、エキストラとして起用された数多くの素人女性などへのヒアリングを挿入してくるが、フェリーニ自身へのインタビューは描かれない。
そこに本作の弱点を感じる。カステルヌオーヴォ監督はロジャー・エールスがフェリーニのインタビューを多用したドキュメンタリー「魔術師フェリーニ」(1976)での撮影監督でもあり、演出術に関しての真摯な質問には手も足も出ないと感じての直接インタビュー回避なのかと勘繰ってしまった。
つまり、外堀を埋めていくことによってフェリーニの人間像に迫ったと解釈もできる。撮影現場に74歳になったアメリカのコメディ俳優ダニー・ケイが陣中見舞いに来たり、オペラ風の演出時には「日本の歌舞伎にも」といった会話や、かなり老齢な俳優たちや逆に子供たちへの直接的な演技指導の差異なども登場してきて本編が見たくなるのも事実。
ただ、どうしても作家性を強調する作品ではなく、「記録」のイメージが先行するので妙な消化不良を感じさせるのが残念。