ロスト・イン・ラ・マンチャ – LOST IN LA MANCHA(2001年)

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スタッフ
監督:キース・フルトン、ルイス・ペペ
製作:ルーシー・ダーウィン
脚本:キース・フルトン、ルイス・ペペ
撮影:ルイス・ペペ
音楽:ミリアム・カトラー

キャスト
彼自身 / テリー・ギリアム
彼自身 / ジョニー・デップ
彼自身 / ジャン・ロシュフォール
彼女自身 / ヴァネッサ・パラディ
ナレーター / ジェフ・ブリッジス
彼自身 / トニー・グリゾーニ
彼自身 / フィリップ・A・パターソン
彼自身 / ニコラ・ペコリーニ
彼自身 / アンドレア・カルダーウッド

日本公開: 2003年
製作国: アメリカ、イギリス キホーテ・フィルム作品
配給: シネカノン

あらすじとコメント

ある種のドキュメンタリー作品。正式には「メイキング」なのだが、本編自体が頓挫しているので微妙なスタンスではある。

スペイン、ナヴァッラ

映画監督テリー・ギリアムは10年越しの企画「ドンキホーテを殺した男」の映画化を温めていた。膨大な予算を何とかヨーロッパ資本のみで調達し、出演陣もほぼ決まり着々と実現化していった。

しかし、故オーソン・ウェルズも「ドンキホーテ」の映画化を試みながら未完に終わっていたように、様々なトラブルが監督を襲う。資金繰りが上手く行かず予算が減額になったり、低予算のため代替えで借りたスタジオが使い物にならなかったり。他にも撮影開始直前まで主演のジョニー・デップが来なかったり、ヴァネッサ・パラディとの契約が決まらないなどのトラブルが続出していくのだ。

それでも何とかなるさとばかりに見込み発進で撮影を開始するが、突然の土砂降り、上空を訓練飛行するF−16などの障害が発生し、遂には主役のジョン・ロシュフォールがヘルニアになり、結局、製作中止に追い込まれてしまう。

そんな状況でも監督はあきらめず、差押え対象として保険会社の手にある撮影済みフィルムと製作権を奪取するべく努力を続けるが・・・

奇才監督が映画製作しようとする姿を追うドキュメンタリー。

本来であればソフト化発売の際の特典として収録される「メイキング」を堂々とそれだけで公開することに激怒した映画ファンもそれなりにいた作品でもある。

確かにそれも一理ある。しかし、何としても本編製作を諦めきれない監督にとっては、これの公開で得る収益も本編の製作費に回せると考えているに違いない。

何故なら自主制作映画も含めて『映画製作』に関わった人間なら、間違いなく身につまされる作品でもあるからだ。

自分は学生時代に8ミリで映画製作に勤しんだ経験があり、完成を目指してあがけばあがくほど悪化していく雰囲気や、もしかして未完のままで製作放棄にならないかとかの心配が付き纏う空気感にはギリアム監督に同調できて鳥肌が立った。

何かを協力して生み出す作業は、当事者にとっては地獄でもあり、ゆえに完成後の高揚感には中毒性があることも知っているから。

本作の前提には奇才と呼ばれたテリー・ギリアムが「バロン」(1989)で失敗した呪縛があると感じさせる。天才ゆえの思い込みと暴走。分かっているはずなのにその悪夢を再現してしまうという滑稽さを描いていくことになる。

前作「12モンキーズ」(1995)のメイキング・ビデオが好評だったために、そのときのドキュメンタリー作家に「メイキング・オブ・ドンキホーテ」を作らせていたことが思わぬ方に走り出し、非常にシニカルなドキュメンタリーが出来あがっていく。

何よりも映画製作になると子供のようになる監督が、前半では微笑ましいキャラクターで、その過程を苦しみながらも楽しんでいる風景が点描されていき、随所に笑える場面も登場して進行するが、途中から度重なるアクシデントが連続する展開で、どんどんシャレではなくなっていき、結局製作中止になっていく過程を克明に描写していく。

特に資金繰りなどはプロヂューサーの仕事になるが撮影中のイメージの増大化で予算は膨らみ、資金調達が困難になることをどこかで理解できても、何とかしたいと思う芸術家気質は、後期の黒澤明がそうであったように、周囲の評価と実際の金銭面は相反するという残酷な事実が監督らの精神面にまで影響を及ぼしていく。笑うどころか、言葉も失うのだ。

それでも最後までメイキング撮影を続けさせた監督に脱帽する。しかも撮影済みのフィルムのみの「予告編」で終わるという、この映画化をあきらめない監督の意気込みに鳥肌が立った。

監督自身が描いたイラストを、ギリアム自らを世にだした人気TVシリーズ「モンティ・パイソン」風にアニメにしたりと監督へのオマージュも見事に表現している。

非常にシニカルな結果になったが、それでも飽くなき実現を追及する『大いなる予告編』としてまとめ、出資者を募る形式で終わっていることに執着を感じさせる。

映画製作の現場の混乱を見事に描破しながら、楽しめるエンターティメントに仕上がっている。ただし、純粋な映画鑑賞ファンには、「映画」としては映らぬかもしれないが。

余談雑談 2024年10月5日
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