スタッフ
監督:パトリス・ルコント
製作:クリスチャン・フェシュネール
脚本:P・ドゥヴォルフ、S・フリードマン、P・ルコント
撮影:スティーヴン・B・ポスター
音楽:アレクサンドル・デプラ
キャスト
ブラサック / ジャン・ポール・ベルモンド
ヴィニャル / アラン・ドロン
アリス / ヴァネッサ・パラディ
キャレラ / エリック・デフォス
シャルコフ / ヴァレリ・ガタエフ
レインコートの男 / アレクサンドル・ヤコヴレフ
ルドウィニャン / ミッシェル・オーモン
ヴァリノ / ジャック・ロマン
判事 / フィリップ・マニャン
日本公開: 1998年
製作国: フランス ユニオン・ジェネラール作品
配給: シネマパリジャン
あらすじとコメント
パトリス・ルコント監督作で継ぐ。斜に構えたというかシニカル系のドラマが多い印象。だが、今回は違う。往年のフランス映画を牽引してきたアラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンドの懐かしいコンビが再タッグを組んだ作品。
フランス、プロヴァンスあたり
20歳にして自動車泥棒が得意なアリス(ヴァネッサ・パラディ)は刑期を終え出所してきた。その際に、死んだ母親からのカセット・テープを遺品として受け取った。
その中には20年前に同時に二人の男を愛してあなたが産まれたと録音されていた。つまり、どちらかが父親であると。だから何だと思いながら、結局二人に会いに行くことにした。
ひとりはカー・ディーラーのブラザック(ジャン・ポール・ベルモンド)で、もう一人はレストラン経営者ヴィニャル(アラン・ドロン)。
しかし、この二人の初老の男は表向きとは別に裏の顔を持っていた・・・
懐かしの名コンビが体当たりアクションに挑戦する洒落たコメディ。
若くして自動車泥棒で生きている若い娘。当然、社会をバカにして大人たちを蔑むタイプ。
父親候補の二名だって負けていない。何せドロンは宝石泥棒だし、ベルモンドは元プロの傭兵。
そんな三人が巻き込まれるのは麻薬取引で大金をせしめたチェチェン・マフィアという設定。そこにマフィアを追う、やる気があるんだか無いんだか謎の警察という布陣。
進行的には娘が試しながら父親の特定を図ることとマフィアの極悪非道ぶりが並行して描かれる。
何ら接点がないので首を傾げながら観て行くと、娘が自動車泥棒ということで、ある意味強引に繋がっていく。
しかも警察が密かに策を講じるから、マフィア側は三人を徹底的にいたぶり始める。
そこから壮年二人のオイオイ頑張るねとニヤけてしまう派手なアクションが連続していく。
特にスタントマンなしで体を張って信じ難いアクションの数々をこなしてきたベルモンドが本作でも、その歳で大丈夫かよと感嘆の声を上げるアクションを披露して、完全にドロンを喰っている。
さすがに「この歳じゃもうキツい。これが最後だぞ」と不敵に笑う姿に拍手を送ったほど。
逆にドロンは本作を最後に映画を引退した。ルコント監督は妙な人間ドラマが多い印象だが、往年の大スター二人を起用して嬉々としてアクション映画を楽しんで作っていると感じる。
ストーリィ自体はわかりやすく、というか、やや強引なのだが、そんなことよりも往年の大スター二人の最期の雄姿をしっかりと見てくれという気持ちが前面にでている。
両名の映画を数多く見てきた映画ファンからすると、一つのフランス映画の終焉を感じさせることが寂しさを喚起させる。
その重責をパトリス・ルコントが演出したというのも興味深い。
往年の軽さはないが、それでも御大二人がアクションで活躍する姿は微笑ましくもあり、郷愁と惜別をも醸している。