スタッフ
監督:ダグラス・ヒコックス
製作:バリー・クーリック
脚本:アレクサンダー・ジェイコブス
撮影:エドワード・スケイフ
音楽:スタンリー・マイヤーズ
キャスト
ロマート / オリヴァー・リード
パット / ジル・セント・ジョン
ウィリアムス / イアン・マクシェーン
ミルトン警部 / エドワード・ウッドワード
ゴールド / フランク・フィンレイ
モーリーン / ジル・タウンゼント
マクニール / フレディ・ジョーンズ
銃器密売人 / ロバート・ビーティ
タッカー / トニー・ベックリー
日本公開: 1972年
製作国: イギリス ピアフォード作品
配給: MGM
あらすじとコメント
今回もイギリスの刑務所が舞台となる犯罪ドラマ。とはいっても、メインは脱獄とその後の展開に妙味がある作品。
イギリス 中部
刑務所に収監中のロマート(オリヴァー・リード)は獄内で暴力事件を起こし刑期が延長された。やっと面会に来た愛妻パット(ジル・セント・ジョン)にも、来るのが遅いと怒るような男だ。
しかし、妻は来れなかったのは獄内事件で面会差し止めをされたからと。閉口するロマート。そして、もう耐えられない、子供も欲しいし離婚して、と告げる妻。彼は激高し防護ガラスを壊して飛び掛かる。横で面会していた隣房のウィリアムス(イアン・マクシェーン)や刑務官に何とか取り押さえられ、すぐさま懲罰房に放り込まれた。
しばらしくして通常房に戻されるとウィリアムスに一緒に脱獄しようと半ば強引に誘う。
何故なら妻に復讐するから手伝えと・・・
妻の心変わりに脱獄してまで殺そうとする男のアクション・ドラマ。
最愛の妻の裏切り、恐らく既に他の男がいるに違いない。絶対に許すまいと決め、隣房の仲間と脱獄後の手配を頼んだもう一人の三人で準備を進める。
イギリスでは通常刑務員は銃を携行しない。その代わりに敷地内に番犬を放している。考えようによっては、いきなり発砲されないので脱獄しやすいのかもしれない。
一応、周到に準備を進め実行する。その過程が丁寧であり、派手さはないが緊張感を保ちながら脱獄劇が繰り広げられる。
結果、成功し隣房の仲間とは行動を共にし、もう一人とは別れる。しかし互いが信用し切ってないので裏をかくような行動を取る。そのあたりも、さもありなん的で納得できる。
愛妻はロンドンにいるが当然捜査網が敷かれ、身辺警護も付いているはず。それでも主人公は諦めず、銃まで入手。
流石に親友は止めるが聞く耳など持たないのも、それまでの言動から当然と思わせる。
果たして復讐は成功するのかというサスペンスと観る側の先読みを外す意外性のある展開で飽きさせない。
監督のダグラス・ヒコックスは有名ではないが、良い意味での垢抜けない系ながらエッジの効いたイギリスの王道アクション映画の担い手と感じる。
事実、ヒッチコックやキャロル・リードのような巨匠感はないが、実に小気味良いタッチと時折挿入されるハッとする場面でのメリハリの付け方など、急激なストーリィ性の変換はないものの、着実な展開ながら見事にしっくりと来る演出は一目置ける。
いかにもミスリードさせる内容でもないが、それでも終盤の展開には膝を叩いた。不器用で直情型の悪党でありながら、どこか哀愁を帯び続ける主役のオリヴァー・リードの独特のタフさも買えるし、共演陣も派手さはないが堅実な演技とバランスを崩さない独特のアンサンブルを醸している。
イギリス製だし、アメリカと比較してB級感は否めないが、中々どうして拾い物の佳作寄りのアクション快作である。
