スタッフ
監督:ドン・シーゲル
製作:ドン・シーゲル
脚本:リチャード・タッグル
撮影:ブルース・サーティス
音楽:ジェリー・フィールディング
キャスト
モリス / クリント・イーストウッド
ウォーデン / パトリック・マクグーハン
ダルトン / ロバーツ・ブロッサム
アングリン / フレッド・ウォード
クラレンス / ジャック・チボー
イングリッシュ / ポール・ベンジャミン
リトマス / フランク・ロンジオ
ジンマーマン / マディソン・アーノルド
ウルフ / ブルース・M・フィッシャー
日本公開: 1979年
製作国: アメリカ マルパソ・カンパニー作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
今回も刑務所からの脱獄モノ。実話を基にしたドラマで暴動といったアクションはなく地味目な内容ながら丁寧に作られたドラマ。
アメリカ、サンフランシスコ
開所以来たった一人の脱獄者もだしていない鉄壁のアルカトラズ刑務所。1960年のこと、そこにモリス(クリント・イーストウッド)という囚人が収監されてきた。
以前の刑務所で脱獄を計り失敗した挙句の送致である。責任者である刑務所長ウォーデン(パトリック・マクグーハン)は冷徹で陰険なタイプ。個人的感情で囚人を処罰するし、粗探しも得意のようだ。
モリスはかなりの反骨精神がある風情だが、先ずは状況判断とばかりに言葉をかけてきた囚人たちのタイプを探り、相手を選らんで交流を持とうとしていく。ただし、当然敵対する者も出て来て喧嘩となり、一方的に売られたにも関わらず所長の一言で両者が一番きつい独房送りとなった。更に所長に敵愾心を燃やすモリス。
やがて元の独房に戻ると以前の刑務所仲間で信頼のおけるアングリン(フレッド・ウォード)兄弟も収監されて来ていた。そこで今までの知り合いと兄弟を含め、考えてた脱獄計画を実行しようと・・・
実際にあった脱獄を描くドラマ。
島自体が刑務所。強固な岩盤地層でトンネルは掘れず、周囲の海水温も低く泳げない。
いわゆる天然の城塞のような場所で過去に何度も脱獄が試みられたが、すべてが失敗してきたところ。
しかし本作ではそこからの脱獄に唯一成功した男らの実話を描く内容。
作劇としては殴り合い等の派手なアクションは極端に少なく、同獄での気の合う仲間選びから計画を熟考していく過程を静かさの中で描き、それが何故か、妙にこちらに染み込んでくるサスペンスが喚起されてくる展開。
監督はドン・シーゲルでイーストウッドとの付き合いは多く「マンハッタン無宿」(1968)から「真昼の死闘」(1970)、「白い肌の異常な夜」(1971)、「ダーティハリー」(1971)を得ての本作である。
イーストウッドは既に監督としても実績を重ねていたので本作も彼の監督主演と誤解した人も多かった。
確かに仲間側と敵対側の対比はわかりやすく、面倒臭く複雑な筋運びでもないのがイーストウッド演出の一翼だから似ている印象を受けるのも当然か。
それで誤解を生んだ作品でもあるが、こちらとしてはシーゲル監督らしいリズム感と、逆にらしかぬ丁寧な作劇に驚いた。
シャープさやクールさよりも細やかさが強調される。そんな演出法が妙なセンチメンタリズムを匂い立たせていると感じる。
確かにイーストウッドはシーゲルを敬愛していた。それを知った上でシーゲルもイーストウッドに敬意を表した演出を心掛けたとも推察できる。
どのシーンや描写にも微妙な余韻を持たせているのも「アンチ権力」が常に漂う作品が多いシーゲルやイーストウッド共通の矜持を感じる。
派手さはないものの実にバランスの取れた、力強い仕上がりの作品。
