掘った奪った逃げた – LES EGOUTS DU PARADIS(1979年)

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スタッフ
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
製作:ジャン・ピエール・ローソン、アンヌ・M・トゥルスキー
脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ
撮影:ワルテール・バル
音楽:ジャン・ピエール・ドゥラン

キャスト
スパジアリ / フランシス・ユステール
68 / ジャン・フランソワ・パルメール
シャルロット / リラ・ケドロヴァ
ラ・バラカ / ガブリエル・ブリアン
ミレイユ / ベランジュール・ボンヴワザン
カイロ / クレモン・アラリ
ビキ / ミシェル・シュボール
ピエール / ミシェル・ペイルロン
マシャン / アンドレ・プース

日本公開: 1980年
製作国: フランス アクレシア・フィルム作品
配給: ジョイパック


あらすじとコメント

前回の「穴」(1960)は刑務所から脱獄するためにトンネルを掘った話。今回は銀行の金庫破りのためにトンネルを掘る話。前回同様、実話の映画化で本作は「穴」の原作者ジョゼ・ジョヴァンニが監督している。

フランス、ニース

フランス陸軍兵士から反政府組織に入り、投獄された過去を持つスパジアリ(フランシス・ユステール)だが、現在は40歳を超して写真屋を営んでいた。

このまま余生的な人生は送りたくないとも思っており、ならば現地の銀行の地下金庫を破ろうと計画を練り始めた。

そんな彼に闇ドル屋が近付いてきた。計画実行にはガスバーナーや掘削道具、更に仲間も必要であるので、仲介を頼んだ。

かなり大掛かりな計画だけに詳細を検討していると、昔の革命仲間で「68」(ジャン・フランソワ・パルメール)と呼ばれる男と再会。心底信頼出来る彼の参加で、更に信用できる別な仲間を何名も補填できた。

いよいよ計画が現実味を帯びてきて・・・

実話を元にした銀行強奪を正攻法で描く作品。

元革命分子。彼より年長で更に過激派だった中年女性に、元革命仲間。そして地元のギャングたち。

計画自体は銀行の壁から6メートル地点を流れる下水道から地下金庫室の壁を破るトンネルを掘り進めるという割と単純なもの。

しかし、それには様々な道具やかなりの人数も必要。

何せ、前代未聞の400億円以上のお宝が眠る金庫破りである。しかも下調べで街に2軒ある百貨店の週末の現金売上、更に400もある個人契約の小型貸金庫もすべて開けて奪うという大胆なもの。

かなり綿密な計画から寄せ集めの仲間たちのそれぞれの確執も散見されるし、銀行休業日の週末土日の長時間に渡り地下金庫室に滞在し片っ端から奪うために食料や、わざわざ宝石鑑定人まで選別用に連れ込むという大胆さを通り越して喜劇にも見えるが、すべてが事実。

ゆえに設定や進行にリアリティがあり、そこいらの男性よりも腹の座った女性闘士や主人公が慕っていた年長女性の末路など少し脱線気味の所もあるが、それはある程度思い込みや脚色が入っているとして理解できようか。

まして金庫室に居座りながらの小型貸金庫を開けていく過程や現金シュートからデパートの売上金が滑り落ちてきたり、逆に金塊や個人秘匿資産の多さにグループ全体が疲弊していくという嬉しい悩みもコメディ的に描かれバランスもとれている。

何よりも原作は実行犯である主人公の手記のよるものというのが強み。映画でも描かれるが、見事に成功するものの3か月後に別件逮捕され、留置中に本計画のことが内通者によってバレる終盤。

口を割るタイプには見えないが自白剤を混ぜた珈琲によって吐いてしまうが、仲間の手引きで取り調べ直後に脱走し、以後、隠遁生活で生き延びたゆえの手記出版というオチが付く。

成程、前科者である監督ジョゼ・ジョヴァンニが気に入る内容だし、どこか監督自身の実体験も作劇に上手く取り入れているとも感じさせる。

正攻法ながら飽きさせない進行には妙味がある。

余談雑談 2025年5月3日
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